第49章 休息
ベッドで抱きしめたモモは、数週間前に比べて、だいぶ痩せていた。
島で彼女を抱き寄せた時、どうして気づかなかったのか。
過酷な状況下で、心身共に無理をしたのだろう。
柔らかさが減り、少し骨ばってしまった身体に触れていると、なぜ傍にいてやれなかったのかと胸が張り裂けそうになる。
強く抱きしめたら、壊れてしまうんじゃないか。
焦がれた体温に欲情しながらも、繊細すぎるモモに不安を抱いた。
他の仲間には決してこんな感情を持つことなどないのに、モモの存在はいつもローを狂わす。
だから時折、彼女を閉じ込めておきたくなる。
危険な目に遭わないように。
誰の目にも触れないように。
「船が汚い?」
そんなこと、今初めて知った…という態度をとれば、モモの愛らしい目が吊り上がる。
「ほら、やっぱり聞いてなかった!」
不満そうに頬を膨らませる仕草を可愛く思い、つい噛みつきたくなるが、その衝動をなんとか抑える。
そうやって怒らせるのも一興だが、ようやく触れられるようになったのだ、あまり機嫌を損ねたくはない。
本当のことを言えば、このままモモの熱を感じ、身体に貪りつきたかったが、目下の問題を解決するのが先である。
モモの体調が最優先。
とはいえ、モモは体調が悪いわけではないのだが。
「……どうすれば太る?」
当然のことながら、ローは己の体型を気にしたことがない。
ダイエットはもちろんのこと、どうやったら太るかなんて知るわけもない。
「心配してくれてるんだろうけど、嫌な質問ね…。」
モモは怒りを収め、眉尻を下げた。
「確か、肉が10キロぐらいあったはずだ。何キロなら食える?」
「え……。……300…いえ、400グラムくらいなら。」
400グラム!
たったそれだけ。
彼女はなんて食が細いのか。
太らせるには、カロリーが必要だ。
より多くのカロリーを摂取させるには…。
「脂身を食え。それにバターをかけたらどうだ?」
「ねえ…、殺す気……?」
怒りや困惑を通り越して、呆れた。
ちなみに、400グラムのステーキならば、一般的に成人男性だって満足する量だと思う。