第49章 休息
海に出たら、続きをする。
モモたちは今、とっくに海の上だ。
けれど、昨夜は疲れていたし、出航した途端にがっついてくるほど、ローも無粋ではない。
そのため、出航から一夜明けた今も、あの約束は果たされていないのだ。
(だからって、今じゃなくても……!)
だってほら、もうすぐみんなが起きてきちゃうし、外だって こんなに明るいのに。
まったくしたことがないわけではないが、秘め事は夜にしたいタイプである。
艶めいた雰囲気に、モモは冷や汗をだらだら垂らす。
「どうした、顔が赤いな。熱でもあるんじゃねェのか?」
わかっているくせに、わざとらしく聞いてくる様が憎らしい。
コツンと額に額が当てられ、距離がいっそう近くなる。
「熱、計ってやろうか。」
ローの手が怪しい動きをし始めて、モモの太腿を這う。
「ちょ、ちょっと……ッ」
一般的に熱を計る行為は、額同士を触れ合わせるものじゃないだろうか。
それなら今、まさにしている。
「やめてったら。」
ローがしていることは、モモの熱をさらに上げることになるから。
「ねえ、本当に。わたし、ただローを起こしにきただけなの。」
ここで流されてはいけないと、不埒に動く腕を押し返す。
「もう起きてる。」
そういうことが言いたいんじゃなくて!
そう言っている合間にも、ローの唇が頬や耳に移動してくるため、モモは気が気じゃない。
「ならちょっと…一緒に来てよ。船がすごく…汚いの。」
「ふぅん…。」
なんだその空返事は。
ぜったい聞いてないでしょう。
「もう、聞いてったら!」
腹が立ったので、目の前にある耳を引っ張る。
するとお返しのように、ローはモモの耳に歯を立てた。
「ひゃん…ッ」
不意打ちの刺激に身体が跳ね、変な声が出た。
「な、なな…なにするのよ。」
「ああ、悪い。痛かったか。」
全然悪いと思っていない口振りだが、気をよくしたのか、今度は歯を立てた箇所をぺろりと舐める。
「や…ッ、ちょ…!」
顔を押しのけようと両手で拒んだ結果、自由になったローの腕が、嬉々として這い上がってくる。
これは、マズイ。