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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第49章 休息




思いっきりしかめっ面をしてあげているのに、ローは楽しげに喉の奥で笑った。

「どうした、不満そうだな…?」

寝起きのせいか、声が僅かに掠れている。

でも、そんなことで ときめいたりしないからね。

「当たり前でしょ、なにをするのよ。」

船の惨状に驚いて、鼻が少し低くなって、それから呼吸困難一歩手前とか、朝からとんだ災難だ。

ところが、後半部分の原因であるローときたら、モモの顔のすぐ横で肘をつき、なに食わぬ顔でこう言った。

「なにって…、夜這いをしてきたのはお前の方だろ。」

「し、してないわよ!」

勘違いしないでほしい。
わたしは純粋に、ローを起こしにきただけ。

「それに、もう朝よ!」

「なら、朝這いか? 我慢のできないヤツだな。」

「だから! ちがう!」

失礼すぎる。
人を欲求不満みたいに言うなんて!

「違わねェだろ。俺の腹をまさぐってきたヤツは、どこのどいつだ。」

「変な言い方をしないでッ」

叩いたのに、叩いたのに。
もはやモモの攻撃など、ローにとってはまさぐる程度にしか感じられないのか。

モモは知らない。
こうやっていちいち全力で反応することが、逆にローを楽しませていることを。


「隠すことはねェよ。…続きを、しに来たんだろ?」

続き…って……。

その瞬間、顔が、耳が、燃えるように熱くなる。

一昨日の夜、あの島でした約束を忘れたわけじゃない。

「なァ、モモ?」

だから、そうやって、無駄に色気を出すのをやめてほしい。

体格で負けて、腕力で負けて、そして色気で負けたなら、もう立ち直れないじゃないか。

いや、そんなことで ときめいたりしないけど!

心の中でそんな言い訳を叫んでみるが、悲しいかな、モモの心臓はばくばくと音を立てて、確実にときめいていた。



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