第49章 休息
こういう時、わたしって普段 大事に扱われてるんだなって痛感する。
たまに頭を小突かれたり、頬をつねられたりするけど、そんなものは可愛いスキンシップだ。
つまり、なにが言いたいかというと…。
バケモノ級の海賊が本気を出したら、わたしの身体はあっという間に崩壊するってこと。
だってほら、今 肋骨がミシミシいったよ。
「ロ、ロー…、苦しい…。いや、ほんとに…ッ」
抱きしめられて肋骨骨折とか、どんなドメスティックバイオレンスだ。
笑えない状況に、モモは必死で抵抗した。
けれど、胸を押すとか、腕から逃れるとか、そういう抵抗は無駄だと学習済み。
そういう方法で彼から解放されたためしは一度だってない。
なので、強硬手段としてローの顎へ手を伸ばし、一部分だけに生えたヒゲをぶちりと抜いてやる。
ヒゲを抜くって、すごく痛いものらしい。
「……ッ」
案の定、ローは低く呻いた。
僅かに腕が緩まり、すかさず脱出。
危ない、もう少しでお花畑が見えそうだった。
「………。」
ぐるりと背を向けたまま、ローが動かなくなった。
「……ロー?」
正当防衛だけど、そんなに痛かっただろうか。
「ねぇ、大丈夫?」
個人差はあるけど、人によってはヒゲを抜くと出血することもあるらしい。
たかがそれくらいでローが弱るとも思えないが、罪悪感をひしひしと感じてきた。
「ねぇ、ローってば……。」
そぅっと肩に触れる。
グイッ。
気づいた時には、視界が反転していた。
ぼすんとベッドの反発力を背中に感じると同時に、肺から押し出た呼吸を奪われた。
「──んんッ」
先ほど引っこ抜いたヒゲの感触を、自分の口元に感じる。
ちくちくと肌を掠めるのは、それほど距離が近いから。
「ちょ…、ん…ぅ。」
抗議の声はローの唇に吸い取られ、代わりに開いた隙間から長い舌を差し込まれた。
この人、ぜったいに起きてる…!