第48章 欠けた力
あれだけ誰にも悟られないように船を出したというのに、結局、村人全員に見送られてしまった。
「どうして気づかれちゃったんだろ。おれ、静かにしてたのにな。」
不思議そうに首を傾げるベポを、シャチが鼻で笑う。
「バカ言え。お前の足音、バッタバタだったじゃねぇか。」
「な…ッ、それを言うなら、シャチこそ大きな声でメルディアを探してたよ!」
「お、俺のせいじゃねぇよ。なあ、コハク?」
言い返されて慌てたシャチは、隣のコハクに助けを求めた。
「さァな。…でも、そういえば誰か、普通に村人に話しかけてなかったか?」
そうコハクが呟けば、「はーい」と手を上げる男がいる。
「俺ッスね。だってほら、人探しは聞き込みが1番大事っていうから。」
「……。」
さすがペンギン。
考え方が普通と違う。
「ま、まぁ…、そのおかげで嬉しいこともあったし、よかったと思うわ。」
なんとも言えない空気を察し、モモはすかさずフォローを入れた。
当の本人はきょとんとしていて、船長命令違反をしたことなど気づいてもいなかったが。
「それにしても、本当に村のヤツら全員来たんだな。すごい人数…。」
海岸は明かりを持った村人がひしめき合い、その区域だけスポットライトを当てたように明るい。
陸からずいぶん離れてしまったけど、まだ村人たちの顔も見える。
笑顔で手を振る村人たちを眺めていると、コハクが「あ!」と声を上げた。
「母さん、あそこ。」
「ん、どうしたの……って、あれは……。」
コハクが指差す方向を眺めると、村人たちから少し離れたところに、明らかに目立つ装いの人影が三つ。
「キッド、キラー、ホーキンスさん…!」
まさか、彼らが見送りに来てくれるなんて。
嬉しくって大きく手を振る。
さすがに振り返してはくれなかったが。
怒涛のような数日間が、脳裏に蘇ってきた。