第48章 欠けた力
ローの腕から下ろしてもらうと、カトレアが思いっきり抱きついてきた。
「おねえちゃん…ッ!」
「ごめんね、カトレア。」
モモは抱擁を返しながら謝った。
驚かせたことと、黙っていなくなろうとしたこと。
「ひどいよッ。私、まだおねえちゃんに言っていなかったことがあるのに…!」
今回、モモに助けを求めたのは、他の誰でもない、カトレアだ。
村のみんなが部外者であるモモたちを恐れ、病の原因だと決めつけて憎んでいたことも知っていたのに。
本来なら、カトレアがそれを諫めて、協力するよう導かなければならなかった。
けれどそれをしなかった結果、モモはひどく傷ついてしまった。
誰よりも走り回って、みんなを助けようとしてくれたモモを。
病の真実を知り、治療を施された村人たちは、モモに合わせる顔がなく、俯いてばかりいる。
そのせいで、モモたちはこんなにも こそこそと出航しなければならなくなった。
恩人なのに。
英雄なのに。
だからせめて、言わせてほしい。
「おねえちゃん、私たちを助けてくれて ありがとう! おねえちゃんは、世界で1番の薬屋さんだった。」
少なくとも、カトレアにとっては。
精一杯の気持ちを伝えると、モモは一瞬驚いて、それから綻ぶような笑顔を見せた。
その表情を見て、カトレアも自然と笑顔になる。
(言えて、よかった。)
言えなかったら、一生後悔するところだった。
モモと過ごした数日間を、大切な思い出にできないところだった。
「いってらっしゃい、おねえちゃん。……またね。」
さよならは言いたくない。
モモは世界を旅するかもしれないけど、カトレアはこの島で生きていく。
だから、いつかまた……。
「うん。また…ね、カトレア。」
人生は意外と長い。
だから、また会うこともあるだろう。
その時には、もっと違う会い方をしよう。
おねえちゃんの話、たくさん聞かせて。
私もたくさん、お話するから。
だから、また会う日まで。