第48章 欠けた力

シャチとコハクの手によって、錨の鎖がガラガラと引き上げられていく。

それと同時に、船体がゆらりと揺れた。

この波に行き先を委ねれば、再びモモたちの冒険という航海が始まる。

船縁で感慨深く海辺を眺めていると、後ろから声を掛けられる。

｢オイ、こっちへ来い。落ちそうで見てられねェ。｣

｢失礼な…、落ちないわよ。どれだけ船で生活していると思ってるの？｣

荒ぶる海の上ならともかく、こんな湾岸で落っこちるはずもない。

それでも心配性なローは、モモがそこから動く気がないとわかると、こちらに歩み寄ってくる。

まったく、どれほどドジだと思われているのだろう。

｢…次は、どこへ向かうの？｣

｢さァな。ログポースに聞いてくれ。｣

新世界のログポースが示す進路は３つ。
どれを選ぶかは運次第。


｢あ、そういえば、ルフィたちはどうしたの？｣

｢お前を探すために、二手に別れた。その後、連絡がとれねェ。｣

｢なにそれ、聞いてない！｣

連絡がとれないって、どういうことだろう。
彼らになにか、アクシデントが起きているんじゃないだろうか。

｢ルフィたちのところへ行く方法は、なにかないの…？｣

実際、本当にただ電波が届かないだけかもしれないけど、もし危機に直面しているのなら、助けにいきたい。

｢……ああ、そういえば、麦わら屋のビブルカードを預かっていたな。｣

｢それを、早く、言って！｣

そうしたら、進路に悩むことなんてなかったのに。

取り出したビブルカードをローの手から奪うと、白クマ航海士のところへ持って行った。

｢ベポ、ルフィたちと合流しよう。｣

｢う？ うん……。｣

思わず頷いてしまったベポは、そろそろとローに視線を向ける。

この船の航路を決めるのは、船長ただひとりだからだ。

｢ハァ…。｣

ため息をひとつ吐いたローは、視線だけでモモの意見を肯定した。

それを受けて、ベポがパッと笑顔になる。

｢アイアイ！ 任せてよ！｣

役立たずの汚名を返上しようと、張り切って指示を飛ばした。