第48章 欠けた力
「お前ら…、なにを遊んでいる。」
ぎゃいぎゃいと騒ぐモモたちを見かねて、ローのお叱りが飛んでくる。
まあ、騒いでいたのはベポだけなんだけど。
「アイアイ。ごめんね、キャプテン。ジャンバールのヤツがさぁ…──」
「ベポ、油を売ってるヒマがあるなら、さっさと航路を決めろ。」
言い訳を聞くことなく怒られた。
打たれ弱い白クマは、雷に打たれたように衝撃を受け、それからあり得ないほど猫背になって落ち込む。
「スミマセン…、使えないクマで……。」
「そこまで言ってないと思うよ。」
それより、そんなに前屈みになると、持ち上げられている わたしの体制も厳しいんですけど。
そそくさとベポの腕から下り、モモも出航の準備を手伝おうとした。
「ペンギン、帆を張るの手伝うわ。」
「いやいや、大丈夫ッス。モモの腕力じゃ手伝いにならないし、俺だけでやった方が早…──あ、ごめん。」
「……。」
うん、まあ、その通りなんだけど。
「シャチ、錨を上げるの? わたしも手伝う。」
「はぁ? モモじゃ逆に海に引きずりこまれそうで怖ぇよ。向こうに行ってなー。あ、コハクー。ちょっと手伝ってくれ!」
「……。」
ちょっと、お兄さん。
成人女性よりも子供を頼るって、どういうことですかね。
(あ、ちょっとベポの気持ちがわかる。)
使えないクマ…もとい人間でスミマセン。
人知れず傷ついてみたが、慰めてくれる人は誰もいない。
いいんだ、いいんだ。
わたしの仕事は家事全般だから。
妙に拗ねた気持ちで、船縁に移動する。
夜の森は不気味なほど真っ暗で、空気も少し冷たい。
(キッドとホーキンスさんにも、お別れが言いたかったな。)
村はずれの家に寄る時間がなくて、結局彼らとは挨拶できないままだ。
この海を旅するつもりなら、いずれ必ず会うことができる。
けれど、その時はきっと……。
だから、なおさら挨拶をしておきたかった。