第48章 欠けた力
ハートの海賊船は、村から少し離れた沿岸に停泊していた。
「ジャンバール!」
久しぶりの海賊船はもちろん嬉しいけど、それよりも、最後の仲間との再会に心が浮き立つ。
その大きな身体に、思いっきり飛びついた。
「モモ…! 無事だったか。」
抱きつくモモをやすやすと受け止め、ジャンバールは安堵の息を吐く。
船番という置いてきぼりをくらった彼は、こちらの状況がまったくわからず、さぞヤキモキしたことだろう。
「ごめんね、ジャンバール。わたし、勝手なことをした。」
それに、自分のせいで海軍に居場所を知られることとなった。
これまでの経緯を説明し謝罪をすると、ジャンバールは「そんなことか…」と笑う。
「俺こそ、お前と船長の危機に気づかなくて悪かった。だが、もう二度と自分を犠牲にするようなことはしないでくれ。」
ジャンバールの願いは、他の仲間の誰よりも切実なものだった。
(そっか……。)
おそらく、彼はシャボンディ諸島のことを思い出しているのだ。
あの島で、モモは天竜人の襲撃から身を挺して彼を守った。
そのことをジャンバールはずっと気にしていて、今回のことも同じ気持ちで感じたはずだ。
「約束してくれ、モモ。」
「…うん、もうしないわ。」
素直に頷くと、モモの頭をすっぽり包めるほど大きな手が、肩に触れた。
「安心しろ、次は俺が守る。お前の盾になろう。」
かつて一船を率いていたジャンバールが、頼もしく言った。
「盾だなんて、大げさね…。でも、ありがとう。」
わたしも、みんなを守りたい。
だから探さなくては。
自分を犠牲にするんじゃなくて、もっと他の守り方を。
「やいやい、ジャンバール! いつまでモモにくっついてんだ!」
大きな手をバシリと払い、モモの身体を持ち上げたのは、これまた大きな白クマだ。
「勘違いするなよ。モモを守るのは、おれなんだからな! ね、モモ!」
なんでかベポは、ジャンバールによく対向する。
「うん、ありがとう。」
ふふん、と得意気にジャンバールを見た。
対抗されたジャンバールはといえば、……相手にしていなさそうなんだけど。
うん、大人だな。