第48章 欠けた力
「メル…、一緒に準備できる?」
「準備? ああ、なるほどね。」
メルディアはハートの海賊団ではないが、立場的に客人である。
ならば、出航する時は一緒に船に乗るのが自然だ。
「ごめんね、モモ。私はここでキツネを引き渡さなきゃいけないから、一緒には行けないわ。」
「……うん。」
そうだろうなって思っていた。
メルディアはモモのすべてを理解していて、ある意味 1番安心できる存在だ。
彼女にだけは、心の内を吐き出せる。
そんなメルディアに傍にいてほしかった。
でも、彼女には彼女の人生があり、歩む道はモモとは異なるもの。
わたしは海賊。
メルは商人。
ずっと一緒には、いられない。
「そんな寂しそうにしないでよ。またすぐに会いに行くわ。」
「うん、わたしも…会いに行く。」
孤島で待っていた時とは違う。
自分はもう、自由に歩いていけるから。
「なんなら手土産に、あんたのビブルカードも取り返してあげわよ。」
「それはいいッ!」
冗談に聞こえない。
メルディアなら、普通に海軍の船に潜入しそうだ。
「うふふ、遠慮しなくてもいいのに。…それで、ここへはなにをしに? 私を探しにきたんじゃないんでしょう?」
あ、そうだった。
本来の目的を忘れかけていた。
「カトレアに会いにきたの。お別れを言いたくて。」
メルディアと違って、カトレアには二度と会えないかもしれないから、きちんとお別れがしたい。
「あの子なら、留守よ。」
「え…、留守?」
「名前は知らないけど“おにいちゃん”に付き添うんですって。」
キラーだ。
そういえば、今朝そんなことを言っていたじゃないか。
迂闊すぎる…。
「会いに行くなら付き合うけど?」
「……ううん。」
病院にはたくさん人がいて、会いに行ったら目立ってしまう。
それだと、こっそり出発ができなくなる。
「メル…、カトレアによろしく伝えてくれる?」
本当に残念だけど、もう行かなくちゃ。
別れの言葉をメルディアに託し、後ろ髪引かれる思いで、ローたちのもとへ戻った。