第48章 欠けた力
ジャンバールのことはわかったけど、それにしたって急すぎやしないか。
こんな夜に出航したんじゃ、村の人に挨拶だってできないし、夜の航海は危険も伴う。
どうにも納得しきれないモモに、ベポがおずおずと口を挟んだ。
「モモ、キャプテンは心配してるんだよ。」
「心配?」
「うん。ほら、ビブルカードを作られたかもしれないって話。もしそうなら、1日だって同じ島にいない方がいいよ。」
「あ……。」
そうか、ビブルカードを作られるって、そういうことだ。
サカズキの船からどれくらい飛ばされたはわからないけど、彼らは簡単にモモを追跡できる。
サカズキ本人が追ってくるのか、他の軍隊が追ってくるのかは不明だが、どちらにしても戦闘は避けられない。
もし、この島で鉢合わせることになったら、前回の島同様、ここも火の海になってしまう。
(それは、ダメ……。)
予期せぬ災厄に見舞われた村人を、これ以上傷つけてはいけない。
ここには、カトレアもメルディアもいる。
大事な友達を、巻き込んでいいはずがない。
「ごめんなさい、ロー。わたし、迂闊だった。」
ビブルカードを作られてしまったせいで、これから先、ハートの海賊団は行動を制限される。
自由を愛するローにとって、それがどれほど窮屈なことか。
「気にするな。もともと、お前を助けられなかった俺の不始末だ。」
あの時、ローがサカズキをどうにかできていれば、こんなことにはならなかった。
「でも…。」
「くどい。過ぎたことをとやかく言っても、しかたねェだろ。」
もし、モモを取り戻せずに終わったら、どれだけ後悔しても足りないが、彼女は今ここにいる。
ならば、大事なのは今であり、未来だ。
もっと強くなる必要がある。
今よりもっと、海軍元帥を倒せるくらいに。
「お前のビブルカードは、俺が必ず取り返す。だから、気にするな。」
例え、爪の成れの果てであっても、モモの一部が他の男のもとにあるなんて、我慢できない。