第48章 欠けた力
その夜、ベポとシャチ、そしてペンギンの3人は、へとへとになって帰ってきた。
メルディアに容赦なくこき使われたらしい。
「大丈夫…?」
癒やしの歌を唄えないモモは、彼らの手足を揉んであげることで身体を労った。
バケモノ級の彼らの手足を、こんなにカチカチにする労働って…想像するだけで怖い。
「いやぁ…、姐さんの強制労働はいつものことッスよ。」
「それに、あの連中が来てからは、だいぶ楽になったしな。…悔しいけど。」
キッドとホーキンスのことだ。
あれから本当に手伝いに行ったらしい。
ホーキンスはともかく、もしかしたらキッドは、行ったフリをして手伝わないのではないかと思っていた。
その見解を、心の中で反省する。
キッドは意外と律儀な男だ。
「なんなんだよ、アイツら。バケモノみたいだったぞ。」
唯一 強制労働から免れ、お手伝いのポジションにいたコハクは、キッドとホーキンスを観察してきたらしい。
「ローと“同期”の海賊なんですって。あなたもローを目指すなら、あの2人くらい倒せないとダメみたいよ?」
彼らクラスの海賊は、新世界に山ほどいるというのだから、目眩がする。
けれどコハクだって、そのバケモノの血を継いでいるのだから、成長したら確実に仲間入りするのだろう。
ただでさえ、ローの血を濃く受け継いだコハクだ。
当人たちは互いに無自覚だが、容姿もとても似ている。
大人になったら、今のローのような男になるのだろうか。
(やだ、すごく楽しみ……。)
けれどそうなったら、さすがに違和感を覚えてしまうかもしれない。
(似たもの親子…なんて誤魔化されてくれないよね。)
今から言い訳を考える必要がありそうだ。
そんな脱線した考えに集中していると、ドカリとベッドに腰掛けていたローが口を開いた。
「さて、これで俺たちがすべきことはなくなったな。…なら、今夜出航する。」
「え、今夜!?」
唐突な提案に驚いたが、そんな反応をしたのはモモだけで、仲間たちはローの発言を予想していたようだった。
「まぁ、早い方がいいよね。ジャンバールのヤツも船に残したままだし。」
船番をしているジャンバールは、モモの帰りをずっと待っている。
彼ひとり蚊帳の外で、さすがに可哀想だ。