第48章 欠けた力
「別に占うのは構わんが…。なにか占ってほしいことでもあるのか。」
「……はい。」
モモの親族は、コハク以外に誰もいない。
すなわち、セイレーンの一族の行方は、誰にもわからないということだ。
だから今のモモには、この問題をホーキンスに頼るしかなかった。
「歌の力が…、セイレーンの力がなくなってしまったんです。どうやって取り戻したらいいのか、まったくわからなくて…。」
ローはセイレーンの力なんてなくてもいいと言ったけど、これはモモが使える唯一の力だ。
失ったままにしておけない。
けれど、取り戻し方もわからない。
ならば、ホーキンスに占ってもらおう。
彼の占いは、とてもよく当たるから。
でも、もし占いの結果が良くないものだったら…。
(……怖い。)
力が消えたのが、本当に滅びの歌の代償で、二度と戻ることがない。
そう知ることが怖かった。
(だけど、このままなにもしないでいても、結果は同じだわ。)
だったら怖くても、真実を知りたい。
「いいだろう。」
モモの頼みを了承したホーキンスは、懐からカードを取り出す。
するとカードはひとりでに浮かび上がり、空中に整列し始める。
6年前はこの現象に興奮して、胸を高鳴らせたっけ。
1枚ずつカードが捲られ、そのたびに緊張感が増した。
ホーキンスは一言も喋らない。
「……。」
最後のカードが捲られたが、それでもホーキンスは口を開かなかった。
「……あの、どう…でしたか?」
堪えきれずに声をかけたが、ふむ…と口に手を当てたまま、結果を教えてくれない。
(もしかして…、すごく悪い結果だった…?)
心臓がバクバク音を立て、変な汗がでてくる。
「オイ、バジル屋。もったいぶらすんじゃねェ。さっさと答えろ。」
焦れたローが苛立たしげに口を挟むと、ホーキンスはようやく口を開いた。