第48章 欠けた力
キラーの身支度は驚くほど早く終わった。
もともと、たいした荷物を持っているわけではないからだ。
病院に滞在するのはキラーだけで、キッドとホーキンスはこの廃屋に残るらしい。
そんなに村人と関わりたくないのだろうか。
「…ねぇキッド、あなた暇なんでしょう? だったら、ユキギツネの捕獲を手伝ってよ。」
「……あァ? なんで俺がそんなことをしなきゃいけねぇんだ。」
だって、キッドは村人と距離を置きたいかもしれないけど、たぶん村人たちは謝りたいはずだ。
彼らは今回の件を、キッドたちのせいにしてきたのだ。
そのキッカケは、些細なものでいい。
でも残念ながら、その些細なものを作るのは、なかなか難しいかもしれない。
キッドはモモの言うことなんて、聞かないだろうから。
「ユースタス屋、お前は俺に借りを返すと言っていたな。だったらコイツの言うとおり、村の連中を手伝いに行け。」
「……なんでそれが、お前に借りを返すことになる。」
「俺の部下も、キツネ狩りに駆り出されているんだよ。さっさと島を出たいのに、迷惑なことだ。」
助けたローたちは手伝っているのに、助けられたお前らは手伝わないとは、どういう了見だ…と暗に告げている。
「……チッ!」
忌々しく舌打ちをしたと思うと、キッドは乱暴な足取りで家を出ていく。
慈善活動とか、そういうことが嫌いなんだろうな。
ローだって、以前はそうだった。
本当は優しい人たちなのに、恐ろしい海賊だと誤解されるのはもったいない。
「では、俺も行くか…。」
部屋の隅で、カードを並べていたホーキンスが立ち上がった。
「あ、ホーキンスさん…! 待ってください、お願いがあるんです。」
キッドに続いて、家を出ようとする彼を引き止めた。
「なんだ。」
「あの…。占いを…、お願いできませんか?」
これを言うのは、実はすごく勇気が必要だった。
なぜなら、ホーキンスの占いは本当によく当たる。
昔、一度占ってもらった時、彼はすべてのことを当ててみせたから。
あの日のことも……。