第48章 欠けた力
あんなにいい顔をしなかったローだが、診察はしっかりとしてくれた。
「問題はなさそうだな…。あと2~3日もすりゃァ、動けるようになるだろ。」
動けるようになれば、彼らはまた海に出るだろう。
そうしたら、またいつ会えるかもわからない。
今度会う時は、本当に敵同士かもしれないのだ。
(けど、今日のことを後悔することはないと思う。)
彼らのおかげで、自分の愚かさや未熟さを再確認できた。
ローに想いを伝えようと決意していたものの、あんなにも素直に打ち明けられたのは、すべてそのおかげだ。
「で、お前ら…これからどうするつもりだ。」
診察を終えたローが問うと、キッドがフンと鼻を鳴らした。
「どうもこうも、決まっている。キラーが動けるようになりゃ、すぐにでも出航する。」
「そういうことじゃねェよ…。」
チラリと寄越したローの視線を、モモは正確に理解した。
「病院のベッドが空いているの。ここじゃ衛生的にも良くないし、そっちに移動しない?」
いくらキラーに外傷的なダメージがなくても、身体はまだ衰弱しているはず。
ローはモモが、それを気にしていることをわかっていたようだ。
「あァ? なんで病院なんかに行かなきゃいけねぇんだよ。」
「キッドに聞いてないんだけど。…あのね、いくら体力魔神のあなたたちでも、休む場所は選んだ方がいいと思うの。」
治れば長い航海に出るならなおさら、きちんと休んでおいた方がいい。
だが、キッドは村人と慣れ合うことが不服のようだ。
「そうしようよ、おにいちゃん! そうしたら私、一生懸命看病するよ!」
嬉しそうなカトレアに迫られ、キッドの腰が若干引ける。
「ねえ、おにいちゃん!」
「……ッ」
意外だ。
キッドは子供に厳しいことが言えないらしい。
そんな様子を見て、キラーはマスクの下で笑った。
「ありがたく移らせてもらう。俺もそろそろ、まともなベッドで眠りたいからな。」