第48章 欠けた力
村はずれの廃屋へとやってきたモモとローは、その戸をノックした。
昨日の朝までは、モモもここで過ごしていたというのに、今やまったく別のものに感じる。
ローと再会した今、ここはモモの居場所ではなくなってしまったからだ。
そんな自分の都合の良さには、うんざりとするけれど。
ガチャリと戸が開くと、中から現れたのは可憐な少女だった。
「…カトレア!」
「あ、おねえちゃん!」
にっこりと笑むカトレアの向こう側には、ローと同じく最悪の世代と呼ばれる海賊が3人いる。
「おねえちゃんも、お見舞いにきたの?」
「うん。カトレアも?」
「そうだよ。心配だったから。あと、ゴハンも持ってきたの!」
家の中のテーブルには、今は貴重である食料が置いてある。
どうやら、この幼い少女は、モモよりもよほど気遣いができる子らしい。
「…なんだ、なにをしに来やがった。」
明らかに迷惑そうな声をだしたのは、あいかわらず態度の悪いキッド。
「なにって、お見舞いよ。キラーの様子が気になったから。」
カトレアに開けてもらった玄関から中に入ると、今回の被害者であるキラーは、ベッドから身体を起こせるほどに回復していた。
「おはよう、キラー。体調はどう?」
寝起きだろうが療養中だろうが、マスクを付けたままの彼は、表情も顔色もわからない。
しかし、僅かにくぐもった声は、以前より遙かに溌剌としている。
「ああ、だいぶ気分がいい。…トラファルガー、知らないうちに世話になったようだな。礼を言う。」
素直に感謝の気持ちを伝えるキラーは、船長のキッドと比べて、だいぶ常識人だ。
「…別に。お前らのためにしたわけじゃねェよ。」
そうやって、普通に「どういたしまして」が言えないローよりもね。