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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第48章 欠けた力




もし、昔の恋人が目の前に現れたら。

(……そんなこと、あり得ないわ。)

だって、モモが愛した人は、今も昔もただひとり。

ロー、あなただけ。

けれど、かつて愛した彼は、記憶と共に消えてしまった。
消えてしまった彼は、二度とモモの前に現れることはない。

(でも…たぶん、ローが言っているのは、そういうことじゃない。)

モモは証明しなければならないのだ。
自分の唯一が、ローだけであることを。

それを証明できなければ、彼の信用を得ることができない。

だから、想像する。

もしここに、6年前のローが現れたのなら。

それは、夢のようなこと。
何度も何度も、会いたいと願った。

だけど……。

(……ごめんなさい。)


「どうもしないわ。」

それが、モモの答え。

「…どうもしない、だと?」

「ええ。…だって、わたしはローを選んだんだもの。」

ごめんなさい、愛しい人。

共に過ごした日々は、宝石のように煌めくものだけど、わたしは選んだ。

過去のあなたではなく、今のあなたを。

過去に囚われるんじゃなくて、未来へ一緒に歩みたい。

だから、さよなら。
過去のあなた。


「この先、どこの誰が現れようとも、わたしが選ぶのは…ロー、あなたよ。」

そう言って、ローの手を握った。

どうすれば彼を幸せにできるのか、正直わからない。

けれど、この手はずっと、離さずにいよう。
この先どんな困難が訪れようとも。

(…伝わったかな?)

心を言葉で現すのって、すごく難しい。

すべてはとても伝えきれないけど、少しでも多く伝えられただろうか。

(ローの能力で、心の中身が覗けたらいいのに。)

そうしたら、この気持ちをわかってもらえる。

「お前とコハクは、同じようなことを言うんだな。」

「……え?」

突然の指摘に、目を瞬かせる。

コハクのそんな言葉を、モモは知らない。

「お前とコハクは、似てないようで、結構似てる。」

「ねぇ、なんのこと?」

「……こっちの話だ。」

そう言って小さく笑うローは、嬉しそうに見えた。

モモが思うよりずっと、気持ちは伝わったのかもしれない。



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