第48章 欠けた力
モモの告白は、ローにとって青天の霹靂だった。
なぜなら、モモの元恋人の正体は、エースで間違いないと思っていたから。
二度と恋人に会えない理由も、恋人の正体をひた隠しにする理由も、それぞれ納得ができた。
それなのに……。
(違う、だと…?)
モモの口から、エースが恋人だと明かされたことは一度もなかった。
けれど反対に、エース以外の男の名も、一度たりとも出てこない。
普通に考えれば、この否定こそが嘘だと思うところだ。
しかし、モモの真剣な眼差しが、嘘ではないことを証明している。
(火拳屋じゃない。なら、誰が…?)
そもそも、モモが犯した罪とはなんだ。
人殺しか、裏切りか。
けれどモモは、想像できないくらいの悪いことだと言った。
彼女がどんな過ちを犯して、どんな償いをしてきたのか、ローは知らない。
たぶん、尋ねても教えてくれないだろう。
知りたくないと言えば嘘になる。
昔の男がどんなヤツで、どんなふうに愛されたのかを知りたい。
…でも、考えるだけで殺意が湧く。
しばらく考えて、気づいた。
「……イヤ、重要なのはそこじゃねェな。」
「え…?」
そうだ、重要なのはモモの過去じゃない。
欲しいものも、手に入れたものも。
「お前、もしその男が、目の前に現れたら…どうする?」
ローが欲しいものは、手に入れたものは、モモの今であり、未来だ。
モモは自分を好きと言ったけど、彼女の心の中だけは、未だ測りきれない。
こうやって昔の男に、親しげな海賊に、いちいち妙な警戒と勘ぐりをするのはごめんだ。
昔の話を聞いてほしくないと言うならば、聞いたりしない。
けれどそのかわり、確固たる答えが欲しい。
心から愛した男が現れた時、お前はいったいどうするのかを。