第48章 欠けた力
ここ最近、満月を見てもエースを想い、後悔することはなくなっていた。
まだ彼を思い出にはできないけれど、それでもルフィと対話できたあの日から、自分の中で決着がついたのだ。
当たり前だが、普段エースの話題など上がるはずもなく、ローの口からでた彼の名前を、とても懐かしく感じた。
けれど、なんで今なんだろう。
「今の話と、エースがなんの関係があるの?」
異性のタイプに年齢が関係していると思われていたことも驚きだが、エースの名がでたことも驚きだ。
まるで、モモがエースを好きみたいに。
(……ん?)
なんか、どこかで聞いた話だ。
そういえば、前にも誰かに聞かれたことがあったな。
あれは、いつのことだったか。
(確か…、そうだ…前の島でコハクに…。)
2人で街を散策している時に言われたのだ。
そう、唐突に。
『オレの父さんって、…エースなのか?』
そんなあり得もしない確認を。
(あれ、コハクはどうして急にそんなことを言い出したのかしら…。)
あの時は驚いて、そしてコハクがすぐに納得したから追求しなかったけど、よく考えればおかしい。
今までそんなことを聞かれたりしなかったのに、なぜ突然そんな疑問がでてきたのか。
(……ちょっと待って。)
あの時、コハクがそんな質問をしてきたのは、確かローとコハクが“親子”になったすぐあとではなかったか。
なぜそのタイミングなのか。
考えれば、おのずと答えは見えてきた。
エースが父親だと思っていたのは、コハクじゃなくて──。
恐る恐るローを見ると、彼はそっちこそなにを言っているんだという表情をしていた。
「今さら隠すこともねェはずだ。あの男が、お前の昔の男なんだろ。」
……やっぱり!
ああ、でも。
原因はモモ自身にあった。
以前、コハクの父親は昔の仲間だと言い、所属していた海賊団を誤魔化すために白ひげ海賊団だと嘘を吐いた。
そしてエースと仲がいい。
誰がどう考えたって、そうなるじゃないか。
(ああ、わたしのバカ…ッ)
これが身から出た錆というやつなのか…。