第48章 欠けた力
あいかわらずキラーたちは、村はずれの廃屋に滞在しており、療養環境としては最悪だった。
できれば、病院の空きベッドか宿屋に移ってもらいたいものである。
「それはなんだ。」
彼らの家に向かう途中、ローがモモの持つカゴの中身を尋ねてきた。
「滋養強壮効果がある薬よ。昨日、宿屋の台所を借りて、薬草を煎じたの。」
歌の力を使えない今、モモにできることといえば、純粋に薬剤師としての能力だけ。
カゴの布を取り、数種類の薬が入った瓶を見せると、ローは不愉快そうに眉をひそめた。
「…やけに献身的じゃねェか。」
「普通でしょう。言っておくけど、この薬は村の人にもあげたものだからね。」
確かにキラーの容態は、村のどの患者の容態よりも気になることではあるが、だからといって彼を特別扱いしているわけではない。
ましてや、ローが疑うことなどなにもない。
「診察は俺がする。お前は手を出さなくていい。」
「……。」
まあ、ありがたい。
最強のお医者様が診てくれるなら、これ以上安心なことはないし、モモの出番もない。
だけど、なんだろうな。
なんとなく、ムッとする。
たぶん、ローが善意から言っていないことがわかるからだ。
「なんだか、ずいぶんとキラーやキッドを気にするのね。」
過去の経験から、ローの独占欲は強い方だということはわかっていたが、どうにも今回はそれが目立つ。
ローがいぬ間に行動を共にしていたから、多少はわからなくもないが、それにしても、こんなにも気にすることは珍しい。
それを指摘すると、ローはあからさまに機嫌を悪くしつつも、ぽつりと呟いた。
「……ユースタス屋は、お前と歳が近いだろ。」
「…だから、なに?」
確かにキッドとは同い歳だが、それとなんの関係があるのだろう。
しかし、次の理由にモモは唖然とした。
「お前は、歳が近い男の方が好みなんだろ?」
「……はい?」
なんだその設定は。
一応言っておくけど、ローと自分だって、そんなに歳は離れていない。
「なぁに、それ。なんでそんなことを思うの?」
ローにそんなことを思わせる理由は、なにかあっただろうか。
「火拳屋も…、火拳のエースもそうだった。」
「……エース?」