第48章 欠けた力
「ごめんね、メル。キラーの様子を見たら、すぐにわたしも手伝うから。」
ユキギツネの捕獲は大事な仕事だから、できるだけ力になりたい。
けれど、メルディアは「別にいいわ」とばかりに首を横に振る。
「気持ちだけ受け取っておくわ。…あなたの場合、張り切りすぎて逆にケガをしそうだし。」
狩りや猟に無縁なモモ。
おそらく、その身体能力の低さからいって、転んでケガをするのが関の山である。
「そんなことないよ。キツネくらい、ちゃんと捕まえられるわ。」
「…モモはそう言ってるけど、ロー、あんたはどう思う?」
大丈夫だって言っているのに、メルディアはなぜだかローに確認をする。
問われたローはといえば、短くため息を吐いたあと、早朝から叩き起こされたクルーたちを一瞥した。
「……アイツらを好きに使え。」
つまりそれって、わたしは不参加ってことですか?
「ユースタス屋のところには、俺がついていく。」
当然、モモひとりで行かせる気はないらしい。
モモの周りは、揃いも揃って心配性ばかりである。
「じゃあ、遠慮なく。」
船長の許可を得て手下を増やしたメルディアは、ハートのクルーたちを、いかにこき使おうか嬉しそうに考える。
その様子を見たシャチとベポは「ひッ」と恐ろしげな声を出した。
(ごめんね、シャチ…ベポ……。)
まるで仲間を生贄にした気分。
「オイ、行くぞ。」
ローはローで、絶対についてくる気らしい。
それどころか、モモがキラーに会いに行くのも不服そうだ。
もしかして、さっきの雑談でキッドやホーキンスに、船に乗るよう勧められたことを話したからだろうか。
でもあれは、島の外に出る手段が他になかったからなんだけどな。
「……オイ、行かねェのか。」
「あ、行く行く。行きます。」
ローの表情に、独占欲がちらりと見える。
これは素直に従った方がよさそうだ。