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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第48章 欠けた力




良かった、この場所に帰ってこれて。

愛すべき仲間たちを前に、モモの心は軽くなった。

今朝の絶望も昼間の疲労も、まるで嘘みたいに消え去る。

(でも、わたしばっかり悪いな…。)

上陸したその日に、病人のオペや看護。
それに加えて、海軍に居場所を知られるという精神的ダメージ。

自分とは反対に、みんなは疲れていく一方だ。

(…そうだ、歌を唄ってあげよう。)

ここにいる仲間たちに、セイレーンの力を隠す必要はない。
せめてもの償いに、癒しの歌で回復してもらおう。

この島にきて、全然役に立たなかった歌だが、ようやく活躍することができる。

誰に乞われるわけでもなかったが、モモは労りの気持ちを込めて、癒しの歌を唄った。


(……あれ?)

違和感を覚えたのは、唄い始めて少し経った頃。

いつものように気持ちを込めて、いつものように唄っている。

そのはずなのに…。

一度唄を止めると、仲間たちにパチパチと拍手を贈られた。

「すごいすごい! モモは本当に歌が上手いね。おれ、心が洗われるよ。」

「いやー、癒されるッス。」

違う、そんなことはない。

みんなの褒め言葉に、モモは喜ぶことができなかった。

なぜなら、へとへとなシャチの体力も、ペンギンの腕にできた擦り傷も、なにも回復していなかったから。


「どうして…?」

今まで、一度だってこんな失敗をしたことがない。

「なんだ、どうかしたのか。」

「ロー…。歌が、効果を発揮しないの。みんなの体力を回復するつもりだったのに。」

困惑するモモに、ローもふむ…と考える。

モモの歌は素晴らしかったが、確かに身体に変化は起きていない。

「回復するほど、俺たちの体力は減っちゃいねェよ。」

「でも……。」

納得できなさそうなモモの頭をポンと撫でた。

「疲れているのは、お前の方なんじゃねェのか。あまりに色々ありすぎた。調子がでなくても不思議なことじゃない。」

ローだって、体調によって能力の範囲が狭まる。
きっと同じようなことだと慰めた。

「そう…なのかな。」

「ああ。今日はもう休め。」

疲れているだけ。
本当にそうなのかな。

まだ不安は残っていたが、ローの指示に頷いた。

朝には元通りに唄えることを信じて。



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