第48章 欠けた力
帰り道、この2週間のことを互いに話し合った。
苦労話ではなく、カトレアにもらったリンゴがおいしかったとか、メルディアの女王様っぷりにシャチとベポが怯えていたとか、些細な話。
そんな2人を見て、出迎えた仲間たちは心底安心したようだった。
心配されていたことをローは不服そうにしていたが、そもそもあんな連れ出し方をしたからだと思う。
モモが体臭を気にしていたから、ローは宿屋の主人に入浴の許可をもらってくれた。
みんなにもビブルカードのことを話しておきたかったけど、せっかくなので その好意に甘えることにする。
けれど、その前にこっそりコハクに近づいて、耳打ちをした。
「……ちゃんと言えたわ。」
ローに気持ちを伝える。
その行動の背中を押してくれたのは、コハクだ。
だから真っ先に、結果を報告しなくちゃいけない。
息子相手に、ちょっと恥ずかしいけど。
こんな情報量の少ない報告にも、コハクは笑って頷いてくれた。
モモとローは“恋人”になり、コハクとローは“親子”になった。
6年前、諦めたはずの関係が今ここにある。
その事実に涙が零れそうになる。
「ほら、早く入ってきなさいよ。」
絶妙なタイミングでメルディアが促してくれたから、みんなの前で泣き顔を晒さずにすんだ。
でも、胸の震えは簡単に治まってくれなくて、涙が止まるまでモモはひとしきり浴室で泣いた。
赤らんだ顔を入浴のせいにして部屋に戻ると、青ざめたシャチと落ち込むベポの姿が目に入る。
「…どうしたの?」
「ああ…、モモ。お前、赤犬にビブルカードを作られたんだってな。」
げっそりとしたシャチに問われ、原因を悟る。
ローがみんなに話したのだ。
「うん。…ごめんなさい。」
「いやいやいや、全然気にしてねぇから。…ドンと来いって感じだし。」
言葉と顔色が合ってないよ。
「ちゃんと逃げ切れるかな。…おれ、焦って舵切る方向間違えるんじゃないかな。…スイマセン、船も操れないクマで。」
落ち着いて、まだ出航すらしてないよ。
「許せねぇ、海軍のヤツら。モモの可愛い爪を勝手に! …モモ、深爪してないッスか?」
ねぇ、ペンギン。
心配するとこ、そこなの?