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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第48章 欠けた力




「……は?」

思いもよらないことを言われ、ローの眉が訝しげに寄る。

なにを言われたかわからないって顔だ。
わかるよ、モモだってこんなこと自白したくなかった。

「だから…、臭うの。お風呂、入れてないの。」

それゆえに、あまり近づかないでほしいと訴える。

「なにを今さら…。」

ローからしてみれば、かなり今さらな話だ。
ついでに言えば、気にもならなかった。

「別に、臭わねェが。」

すん…と鼻を鳴らすから、モモは大仰に悲鳴を上げた。

「嗅がないで!」

「ベポの獣臭に比べりゃァ、可愛いもんだろ。」

「ベポと一緒にしないで!」

あ、ごめんベポ。
決してベポのことを臭いと思っているわけじゃないよ。

ただ、あの白クマがなかなか風呂に入らないのは、清潔を愛するハートの海賊団の悩みではあるが。


「と、とにかく…、今はダメなの。」

そもそも、病は収束したとはいえ、亡くなった人もいるのに、なんて不謹慎なことをしていたんだ。

冷静さを失っていたことに、ひっそりと反省した。

だというのに、ローときたら…。

「じゃあ、いつならいいんだ。」

「いつって…。」

そういう話じゃなくて。

「今じゃなきゃいいんだろ? 続きはいつ?」

続き。

それが指すことを理解して、とたんに顔が熱くなる。

「なァ、いつだ。」

だから、不謹慎だって!

でも、それを説いたところで、理解を示してくれるような相手じゃない。

「答えないなら、今ってことでいいんだな。」

「ちが…ッ。海! 海に出たら…!」

ああ、咄嗟に答えちゃった。

「出航したら…な。まあ、いいだろう。」

思わぬ約束に、ぎゅうっと首が締まる。
雰囲気に流されて“そういうこと”をするのと、約束してするのとじゃ全然違う。

なんでこんなことに。

「言っておくが、俺はまだお前を許しちゃいねェからな。」

「……!」

「心配するな、怒っちゃいねェ。ただ…、楽しみだ。」

…それって。

恐る恐る見上げると、口元が色っぽく笑みを作る。

……なんでこんなことに。



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