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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第48章 欠けた力




柔らかな感触が唇を塞ぎ、モモは息を飲んだ。

突然の口づけに、初めは身体を強ばらせていたけど、しだいにその温かさにうっとりと目を閉じた。

良かった、本当に良かった。

ローはまだ、少なからず自分を想ってくれている。

このキスは、彼がモモの気持ちを受け入れてくれた証拠だ。

決して6年前に戻れるわけじゃないけど、それでも、今までの自分たちとは違う。

ここから、また新たな関係を築いていく。

それが、とても幸せで。

(生きていて、良かった……。)

そんな想いが自然と溢れてくる。

幸せにするのはモモの方で、自分ばかりがこんな想いをするのは間違っているかもしれないけど。

だけどもう少しだけ、この幸せに浸っていたい。

……なんて考えていられるのは、今だけだった。


背中を支えていた手のひらが徐々に上がってきて、モモの後頭部を覆う。

それと同時に、唇を割って肉厚の舌が入り込んでくる。

「……!」

侵入してきた舌は、モモの舌を見つけると器用に捕まえて、扱くように吸い取られる。

息まで奪われそうで、うっとりとした気分がどこかへ飛んでいった。

「ん……ッ」

ローの肩を押し、少しだけ離れようとしたけれど、頭と腰の拘束が緩むはずもなく、徒労に終わる。

奪われた舌は、ローの口内で吸い上げられたり歯を立てられたり、思う存分蹂躙された。

頭か舌か、どちらが麻痺したのかわからなくなった頃、ようやく解放される。

「ふ…、は…ぁ…。」

唇の端から飲み込みきれなかった唾液が流れ、顎下を濡らす。

けれど、熱にのぼせたモモは、それを拭うこともできない。
代わりにローの親指がさっと拭った。

その行為でローの手のひらが、いつの間にか頭から離れていたことを知る。

たかがキスひとつ。
それだけでこんなにも翻弄されてしまう。

奪うような口づけから一転、優しいキスが頬に、それから首筋に落ちた。



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