第48章 欠けた力
『…おいロー、愛してるぜ!!』
そう言ってくれた人は、もういない。
自分の命と引き替えに、天へと上っていった。
家族が死に、彼が死に、もう誰も その言葉をくれる人はいないだろう。
そして自分も、それを欲することはないだろう。
そう思っていたのに…。
自分が恋情を抱いた女は、とんでもなく面倒な女だった。
身体はひ弱なくせに、心は強くて。
才能や異能に恵まれているくせに、努力家で。
押しに弱いくせに、変なところで頑固者。
おまけに子持ちで、いつまで経っても靡いてくれない。
なんでこんな女に惚れたんだろう。
けれど反対に、惚れない理由も見つけられなかった。
モモじゃなきゃダメで、どうしてもダメで。
想うだけじゃ満足できなくて、強引にでも振り向いて欲しかった。
『自信があるの。ローを世界で1番愛しているのは…、わたしよ。』
いつも自信が持てなかった彼女が、堂々と言い放った。
なにが世界一だ。
俺の過去なんて知らねェくせに。
でもなんだか、ストンと胸に落ちてきた。
そうか、お前が世界一なのか。
なにを根拠に…とか、そんな素振り見せなかったのに…とか、いろいろ聞くべきことがあるはずなのに、そのどれもが出てこない。
ずいぶん黙っていたせいで、モモがそわそわとこちらを窺う。
いいのか、本当にそれで。
お前が選ぶ男は、俺でいいのか。
違ったとしても手放す気なんてないくせに、そんなことを思う。
試しにキッドとホーキンスのことを尋ねてみれば、ぷりぷり怒って否定する。
その姿が可愛くて、ついつい笑みが零れる。
そうか。
俺でいいんだな、本当に。
選んだからには、後戻りはできない。
後悔する時間もないくらい、しつこく愛そう。
離れていた2週間。
地獄のように長く感じた2週間。
けれど今、空白の時間は瞬く間に消え去り、あの日の浜辺に戻った気がした。
『戻ってきたら、…ローが戻ってきたら、話したいことがあるの。』
伝わったよ、十分に。