第48章 欠けた力
溜め込んでいた気持ちを吐き出して、モモの心は軽くなった。
あとは、ローの気持ちしだい。
じっと彼の反応を窺うが、まったくの無表情。
「……。」
沈黙が続く。
お願い、なにか言って…。
言い表せぬ緊張感が漂い、握りしめた手のひらが汗ばみ始めた時、ようやくローが口を開く。
けれど、飛び出してきた言葉は、想像もしていなかったことで。
「お前、ユースタス屋とバジル屋をどう思っている。」
「………ん?」
ローの返答を待ちわびていただけに、的外れな質問に思わずすっとぼけた声が出る。
キッドとホーキンスが…、なんだって?
「ずいぶん親密そうに見えたが。」
「えっと……?」
あれ、今わたし…、告白したよね?
それがなぜ、こんなこと聞かれているんだろう。
まさか、告白が聞こえてなかった?
いやいや、そんなはずない。
思わぬ展開に混乱し始めたモモを尻目に、ローはイライラした様子で質問を重ねる。
「オイ、どうなんだ。まさか、俺がいない間に、なんかあったんじゃねェだろうな…?」
なんかって、なんだ。
(あれ、もしかして…嫉妬されてる?)
そういえば、彼は人一倍独占欲が強い。
嫉妬されるのは嬉しいし、自分を好いてくれているのではと期待が膨らむ。
…嬉しいんだけど。
(今じゃなくてもいいんじゃない?)
だって今、告白したのに!
どれだけ勇気を振り絞ったと思っているんだ。
開いた口が塞がらない。
「聞いてんのか、さっさと答えろ。」
「…キッドはともかく、ホーキンスさんとはもともと友達なの。友達を助けるのは当たり前でしょう。」
ローの目にどう移ったかは知らないが、この緊急事態に何事かあってたまるか。
「ローが心配するようなことは、なにもありませんッ!」
言い方に刺々しくなるのは、しかたないと思う。
だって、これはローが悪い。
人の人生最大の告白をなんだと思っているんだ。
ぷんすか怒るモモには、ローがその様子を見て安堵の息を吐き、口元に笑みを作ったことに気がつかなかった。