第48章 欠けた力
真剣な眼差しでこちらを見下ろすローを前に、恐怖で震えた。
5億の賞金首である彼を、これまで一度も怖いと思ったことはない。
それなのに、言葉ひとつ、ため息ひとつで怯える日がくるとは。
でも、こんな事態を招いたのは他ならぬモモだから、誰も恨めやしないけど。
あの時、どんなつもりで言ったかといえば…。
どんなつもりでもない。
だって、誤解だ。
あの日、わたしは…。
「あのね、勘違いはしないでほしい。」
「勘違い、だと?」
モモはゆっくりと頷く。
今思えば、なんてひどい告白だったのだろう。
言いたいことの半分も、伝えられなかった気がする。
「ねぇ、ロー。あなたはあの時…、わたしが海軍に捕まるから、もう会えないから、だからその勢いで口走ったと思うんでしょう?」
最後だから言う。
そんな言い逃げに近いことを、モモはした。
でも、違うんだ。
本当は言い逃げなんかじゃなくて、きちんと伝えたかった。
「わたし、最初からあの日に言おうと思っていたの。」
自分の、正直な気持ちを。
ずっとずっと隠してきた気持ちを…。
「あなたのことが、好きだって。」
一生分の恋をした。
その相手は、今も昔もただひとり。
この気持ちを、どうすれば伝えられるだろう。
ローがわたしにしてくれたように、わたしもローに伝えたい。
「自信があるの。ローを世界で1番愛しているのは…、わたしよ。」
ご両親でも、妹さんでも、コラソンでもなく。
これだけは、唯一自信がもてること。
なにを根拠に…とか、そんな素振り見せなかったのに…とか、いろいろ思われるかもしれない。
だけど、これがモモの伝えたかったこと。
これがモモの、本当の気持ち。
(……言えた。)
今までずっと隠してきた。
彼に想いを伝える資格など、自分にはないと思ってきた。
記憶を奪った罪を償わなければと。
でも、それこそとんだ勘違いだ。
モモのすべきことは、そんなことじゃなかった。
「わたし…、ローを幸せにしたい!」
気づいた瞬間、ずっと心に残っていた靄が晴れた。