第48章 欠けた力
無事オペが終わった患者たちは、各々の家、または病院に引き取られ、ハートの海賊団には感謝を込めて、宿屋で1番上等な部屋が与えられる。
その部屋で、モモはみんなに頭を下げた。
「……ごめんなさい。」
自分勝手なことをして、みんなの気持ちを踏みにじった。
こうして再会できたのは奇跡みたいなもので、一歩間違えば、ローたちは海軍と全面戦争していたかもしれない。
「よせよ、モモ。頭を上げてくれ。」
「そうだよ! モモが赤犬を遠ざけてくれたから、おれたち助かったんだし。」
シャチとベポが庇うような言葉をくれるが、それに甘えることはできなかった。
この島にきて、自分がどれだけ勝手なのかを知った。
例えば、もし今回の立場が逆で、ローが己を犠牲にしたとしたら、わたしはきっと許さない。
なんで一緒に闘ってくれないの?
仲間が信じられないの?
…そういうことを、わたしはしたのだ。
「……ハァ。」
重い重いため息が降ってきた。
「…コハク、どう思う。」
ため息を吐いた主は、傍らにいるコハクへと尋ねた。
「どうもこうも…、ズルいよな。」
だって、ローも自分も、モモに会ったら胸に溜まった怒りをぶちまけてやるつもりだったのだ。
なのに、先手必勝とばかりに謝られた。
そうしたら自分たちは、なにも言えないじゃないか。
「……コハク、ごめんね。」
再びモモが謝罪の言葉を口にする。
会わない間になにがあったのかは知らないが、モモの中でなにかが変わったように思えた。
たぶん今のモモは、自分やローの気持ちを理解している。
理解した上で、謝っているのだ。
だったらもう、それでいい。
「…オレは、もういいよ。」
コハクの言葉にモモは少し顔を上げ、視線が交わった。
その目は少し涙ぐんでいる。
うん、オレも会いたかったよ。
会話ひとつなく、親子が再会を喜んでいると、邪魔をするかのように言葉が降ってくる。
「俺はよくねェ。」
瞬間、モモの表情が強張った。
「……ついてこい。」
そう言って部屋から出るローに、モモは肩を落としてついていく。
…頼むから、これ以上こじれないでくれよ。
コハクは切に願った。