第48章 欠けた力
最初のうちは半信半疑で様子を窺っていた村人たちも、ローのオペを目の当たりにしたとたん、態度が一変した。
この海賊は、本当に自分たちを救ってくれるのだと。
もちろん、誰もが惨殺のようなオペを見て、腰を抜かしたあとに…だが。
村人の協力もあって、オペは滞りなく施され、最後のひとりが終わる頃には、とっぷり日が暮れていた。
「ありがとうございます…ッ、あんたたちは命の恩人だ!」
泣きながら跪き感謝を述べる村人たちに、ローは思いっきり顔をしかめる。
感謝をされて、こうも嫌がる人間はなかなかいないと思う。
「これで終いじゃねェ。原因をどうにかしないと、また同じことが起きる。」
病の原因となった、ユキギツネ。
あのキツネたちを捕獲しないと、本当の解決とは言い難い。
「はい…。それは明日、動ける人間を集めて、必ず駆逐します…ッ」
一様に頷く村人たちを見て、異議を唱えたのはメルディアだ。
「ちょっと、ユキギツネは絶滅危惧種なのよ。人間の都合で勝手なことを言わないでくれる?」
もともと、人間の都合でこの島につれてこられた哀れなキツネだ。
「…お優しいことだな。」
ローの皮肉に、メルディアは柳眉を寄せる。
放っておけば、再び悲劇が起きる。
そうはわかっていても、モモはどうしてもメルディアの意見に賛同してしまう。
毛色が珍しいゆえに乱獲され、危険があるとわかれば駆逐される。
それはまるで、自分たち“セイレーン”のようだと思ったから。
「心配しなくても、責任は私がとるわよ。確か、絶滅危惧種の動物を保護している施設があったはずだわ。」
商人であるメルディアは、顔が広い。
お願いをすれば、そこで引き取ってもらうことが可能だろう。
「いいこと? 必ず生け捕りにしなさいよ。…もし殺したりしたら、あんたたち、わかっているんでしょうね…?」
絶対零度の微笑みに、ビシリと空気が凍る。
情景反射のように、シャチとペンギンが「ハイ、姐さん!」と叫び、背筋を伸ばした。
美人の迫力って、怖い。