第11章 大好きが止まらない
「ふぅ…、いいお湯でした。」
サッパリとして部屋に戻ったモモの頬は、熱いお湯を浴びたせいで上気している。
「…お前、ちゃんと髪くらい拭けよ。」
彼女のキャラメル色の髪は、水気を含んで毛先からは雫が滴り落ちている。
ローはモモからタオルを奪って頭に被せ、ガシガシと拭った。
「う…、ちょっと、乱暴…ッ」
しっかりと拭かれたために、髪は揉みくちゃだ。
「拭いてやってんだから、ありがたく思えよ。」
そう言って、ローはモモの髪を手櫛で整えてくれる。
「お前の髪、ほっそいな。」
滑らかな手触りは絹糸のよう。
濡れた髪からはカモミールの香りがした。
カモミールには鎮静作用があるらしい。
(どこがだ…。さっきから、こんなに--)
バサッとタオルをモモの頭にかけた。
「…!?」
「あとは自分で拭け。俺も風呂に入ってくる。」
「う、うん…。」
過保護だったり、急に冷たかったり、ローの態度はいまいちよくわからない。
(さて、と。本でも読みながら待とうかな。)
とは言っても、ローの入浴は早いため、すぐに戻って来るだろうけど。
「あ、そうだ。この本、もう読み切っちゃったんだった。」
新しく違う本を借りたい。
(そういえば、あの約束はまだ有効なのよね…?)
本1冊につき、キス1回。
ローが決めたルールだ。
初めはあんなに恥ずかしかったけど、今なら自分から出来るような気がする。
恥ずかしいのは今も変わらないけど、それよりも触れたいという気持ちの方が強い。
それを思えば、このルールも悪くないと思える。
(いつからわたし、こんなにローに触れたくなったんだろう。)
彼が戻るまでの間、次に借りる本を物色した。
「…ふぅ。」
シャワーを浴びながら、ローは深いため息を落とした。
原因はもちろんモモのこと。
(アイツ…、なんだってあんなに無防備なんだ。)
いつもは肌を出さない保守的な服ばかり好むのに、今日の部屋着に限っては、ノースリーブのワンピースだった。
特別、肌が出ているというわけではないが、普段隠す分、鎖骨や二の腕に異常なほど色気を感じる。
さらに湯上がりで血行が良くなった肌と、カモミールの香りがローを煽る。