第11章 大好きが止まらない
「ねぇ、ロー。あなたの夢はなに?」
「…夢?」
「うん。わたしの夢は…そうね、歌の力でたくさんの薬を作って、世界一の薬剤師になること。」
せっかくセイレーンとして生まれたのだ。
この力を隠すのではなく、大切な人のために使いたい。
「まあ、なれるだろうな。お前なら。」
壮大すぎるモモの夢を、ローは笑うこともなく、当たり前のように認めた。
それがとても嬉しかった。
「俺の夢は…コラさんの代わりにドフラミンゴを止めることだ。」
「それって、夢なの?」
もはや使命のようだ。
「…確かに、ちょっと違うか。」
ふむ、と顎に手を当てて考える。
夢、か…。
「そうだな、敢えて言うなら、ワンピースは必ず俺が手に入れる。」
海賊王 ゴールドロジャーが残したと言われる秘宝。
数多の海賊がそれを狙っている。
彼はその秘宝を必ず手に入れると言う。
「なるほど、すごい夢ね。じゃあ、わたしはローと一緒にいれば、ワンピースにお目にかかれるってことね。楽しみだわ。」
「そうだな、必ず見せてやる。楽しみにしてろ。」
遙か先の未来を、2人は当然のように語った。
「さて、今日はもう疲れただろ。風呂に入って寝ちまえよ。」
「…うん。」
ローだって今日はくたびれただろう。
でも本当はもう少し話していたかった。
「なんだよ。…話の続きは部屋で聞いてやる。だからさっさと入ってこい。」
「うん…ッ!」
その言葉にパッと笑顔を咲かせて、飛ぶようにバスルームへと駆けていった。
「そんなことで、そんなに喜んでんじゃねェよ。」
相変わらず、彼女の喜びのハードルは低すぎる。
(けど、まぁ…、それは俺も同じか。)
モモの声をもっと聞きたい、笑顔が見たい。
それだけで幸せを感じる自分のハードルも、そうとう低いものだろう。