第48章 欠けた力
美人の迫力って、すごい。
怒気を纏わせたメルディアに、モモは数歩後退りした。
しかし、そんなことなどお構いなしに、メルディアはモモの頬を思いっきり抓った。
「い、いひゃい…!」
「あんたって子は! 私がどれだけ心配したと思ってるのッ」
そういえば、メルディアにはなにも言わずに旅に出たんだった。
すみません、ほんとすみません。
でもちょっと、手加減っていうか…本当に痛いんです!
「やめろ、顔が伸びる。」
容赦ないメルディアの指を引き剥がしたのは、話を遮られて不機嫌真っただ中のローだ。
「あら…、相変わらずの過保護だこと!」
「あ? 俺がいつ、そんなことをした。」
いつって言うなら、常にだ。
でも、ローには6年前の記憶がないから、あまり言及するとボロが出る。
面倒くさいったらない。
「あ、あの…。メル、どうしてここに?」
ヒリヒリする頬をおさえ、恐る恐る尋ねる。
「誰かさんが無茶をしたって聞いてね。あなたのビブルカードを使って探しにきたのよ!」
「わたしの、ビブルカード?」
そんなもの、作られた覚えがない。
「忘れたの? なにかあった時のために、作っておくってモモの爪をもらったでしょう?」
ビブルカードは爪を原料にして作る、不思議な紙。
そんな出来事があったことを、すっかり忘れていた。
モモはメルディアのビブルカードを持っていたから、それを使ってローたちは彼女に会いにいったのだろう。
それを考えたとたん、血の気が下がった。
今、モモの親指は他の指と比べて、爪が短い。
海軍の船にいた時に、切られたせいだ。
なぜそんなことをするのか疑問に思っていたが、それは、まさか……。
(ビブルカードを…、作るため…?)
もしそうなら、サカズキたちにはモモの居場所がどこにいてもわかる。
どんなに身を隠しても、永遠に追われ続けてしまう。
その事実に、ぞっとした。