第48章 欠けた力
家を出て少し歩いたところで、唐突にローが振り向いた。
モモは反射的に身を強ばらせてしまう。
「ど、どうしたの…?」
まさか、「お前にはガッカリだ」とか そういう話か。
いやいや、ローは優しいから、そんな直球なことは言わない。
……たぶん。
「どうした…は、俺のセリフだろうが。」
「…と、言うと?」
かなりおどおどして聞き返すと、ローは苛ついた様子で答える。
「なんでお前が、あんなヤツらと一緒にいたと聞いてる。」
あんなヤツら…キッドとホーキンスのことだ。
そういえば、と思い至る。
当たり前だけど、ローは自分が海軍に捕まっていると思っていたわけで。
海兵がわんさかいると覚悟して来てみれば、わんさかいたのは病人で、さらには最悪の世代の同期が2人も。
それはまあ、混乱するはずだ。
「えっと、話すと長くなるんだけど……。」
「全部話せ。」
できれば村人の治療に急ぎたいんだけど、話すまで許してくれなさそう。
ゆっくりしてもいられないので、口早に今までのことをかいつまんで話した。
海軍の船に侵入してきた謎の女性に、強制脱出させられたこと。
脱出先がこの島で、偶然2人に出会ったこと。
その時にはすでに病は広がっていて、キラーと村人を助けるために、2人と協力して奔走したこと。
思い返してみれば、怒涛の日々だった。
モモの説明に、ローはようやくこの島に海軍がいないことに納得した。
そして、おもむろに口を開く。
「それで、まさかとは思うが…、お前…──」
「……モモッ!」
ローの言葉を遮って、誰かがモモを呼ぶ。
その声は、モモがよく知った人物の声だった。
「え、メル…!?」
村の方から走ってきたのは、モモの唯一の親友、メルディアだった。
どうして彼女がここに…?
ていうか、美しい顔が怒りに歪んでいて、ものすごく怖いんですけど!