第48章 欠けた力
「あ、あの、ロー…!」
ずいぶん遅れてしまったが、溢れ出す喜びを胸に、ローのもとへ駆け寄った。
「……あぁ、村のヤツらのことか? そっちはシャチたちが動いている。俺たちも向かうか。」
「……あ、…うん。」
発症者は村にもたくさんいて、もちろんキラーだけが助かればいいものじゃない。
それはローに改めてお願いしなければいけないことだったが、彼はすでにわかっていて、オペもしてくれるつもりらしい。
頼もしいし、ありがたい。
そうなんだけど…。
(……あれ?)
なんか、すごくあっさりしてない?
なんというか…、嬉しくないのかな。
ほら、だって、もしかしたら二度と会えないかもしれなかったんだし。
喜びを露わにするローなんて、あまり想像はできないけど、それにしたってもう少し…。
(もしかして…、怒ってる?)
ローにしてみれば、モモの行動は海賊としての誇りを傷つけられ、屈辱的なものだったはず。
そんなモモに、愛想をつかしたのかもしれない。
(やだ、わたし……。)
ひどいことをした、謝らなくちゃ。
そういう想いはあったものの、嫌われるなんて考えもしなかった。
いつの間にか、好かれることが当たり前になっていて。
なんて、贅沢な勘違い。
別れる時、これが最後かもしれないから…と、自分の気持ちを正直に伝えた。
『あなたのことを、愛してる。』
ずっと昔から、ただひたすらに想っていた気持ち。
あんな状況だったけど、心からの言葉。
けれど、今さらだったのだろうか。
恥を掻かせた上に、言うこともきかない女なんて、普通嫌いになるよね。
「……。」
ローに嫌われた。
その事実に、先ほどまで溢れていた喜びが一気に萎んでいく。
「オイ、行かねェのか。」
「あ…、行く。行きます!」
置いていかれそうな雰囲気に、モモは慌てて我に返る。
キラーはもう心配ない。
あとで、癒やしの歌を唄ってあげよう。
ケホ…と思い出したように咳が出た。