第48章 欠けた力
うそだ、うそだ……。
夢を、見ているのかも。
だって、こんな、都合よく…。
玄関のドアが、目の前で開いた。
くぐれば終わりだと思われていたドア。
そのドアから現れた人は、会いたくて、会いたくて、でも、ここにはいない人。
いるはずのない人。
「…オイ、こりゃァどういう状況だ。」
夢の中の住人が、口を開いた。
なんて…、なんて鮮明な夢。
「………神様。」
思わず呟いてしまったら、神様呼ばわりされたその人は、思いっきり顔をしかめた。
「は……?」
ああ、その嫌そうな顔。
本当に現実みたい。
そういえば、前にもこんなことがあったな。
あれは、いつのことだったか。
そう、コハクと2人 暮らしていた島で、突然ローが現れて。
でもあれは、夢じゃなくて現実だった。
じゃあ、今回は…──?
「…気易く触るな、手を離せ。」
抱きかかえたままのホーキンスから、連れ去られた。
バランスを崩して、思わずその首もとに腕をまわす。
その体温が、夢とは思えないくらいリアルで。
きわめつけに、ホーキンスの一言。
「…なぜここにいる、トラファルガー。」
見えるんですか、ホーキンスさん!
「理由が必要か?」
普通に受け答えするローに、モモはだんだん混乱してくる。
現実?
これは、現実?
怒涛の展開に目を白黒させていると、ベッドに横たわるキラーが「うぅ…」と呻いた。
「……!」
そこでようやく我に返る。
なにを呆けているのだ。
今、確認すべきことは…!
「ローッ! 本物なの!?」
抱えられているのをいいことに、胸ぐらを掴んで無理やりこちらを向かせる。
「……? 当たり前だろうが。」
モモの行動に一瞬驚いた表情をみせたものの、しっかりと肯定してくれる。
本物!
ローが!
なぜ? とか、都合よすぎない? とか疑う自分がいるけど、この際なんでもいい。
「お願いッ、キラーを助けて…!」
わたしに今必要なのは、トラファルガー・ローという恋人ではなく、世界一の腕を持ち“死の外科医”の異名を持つ医者だから。