第48章 欠けた力
カトレアからモモの居場所を聞いたローは、ひとりで目的の家へ向かった。
コハクとベポも一緒にきたがったが、危険があるかもしれないので許さなかった。
コハクになにかあっては、せっかくモモと再会できても合わす顔がない。
もともと、そういう約束だ。
カトレアの話では、この村に海兵はいないらしい。
モモがいるのになぜ? とは思ったが、それを聞いている時間はない。
ローの持つ指輪が、早く早くと急かすように光のだ。
「……あれか?」
カトレアが教えてくれた家が見えてきた。
小さい家と言っていたが、明らかに誰も住んでいない廃屋。
村人を救おうと奮闘しているはずのモモが、なぜこんなところに?
疑問が次から次へと湧いてきたが、あっという間に家の前に着く。
この中に、モモが……。
最後に顔を見たのは、もう何日も前。
ふざけたことをして、ふざけたことを言った。
あの捨て台詞のような言葉を、絶対に忘れてやらない。
おかげさまで、何度も夢に見た。
女々しい自分に嫌気もさした。
モモさえいなくならなければ、こんな想いをせずにすんだのに。
償わせてやろう、何度でも。
はやる気持ちを抑えながら、冷静に戸へ手を掛けた時、中から叫び声が聞こえた。
モモの声だ。
飛び込みたい衝動をぐっと堪え、様子を窺う。
「待って! お願…、もう一度だけ……!」
縋るような声は、どこか掠れている。
なにを頼んでいるのか疑問に思うと、第三者の声がした。
「早く連れ出せ…。」
男の声だ。
それも、どこかで聞いたことがある。
どこだったかと記憶を辿っていると、再びモモが叫んだ。
「いや……ッ!」
心からの拒否。
全力で嫌だと叫んでいた。
彼女のこんな声を、いまだかつて聞いたことがない。
瞬間、身体が勝手に動いていた。
中の状況もわからないのに、正面から戸を開いた。
「………。」
時間が止まり、静けさが訪れた。
夢にまで見た彼女の顔は、まるでありえないものを見たかのように固まっている。
その瞳から、ぼろりと大粒の涙が落ちた。
誰もが言葉を失う中、最初に口を開いたのはローだった。
「オイ…、こりゃァどういう状況だ。」
とりあえず、その手を離せ。