第11章 大好きが止まらない
「悪魔の実の能力でもねェのに、不思議な力だな…。」
「うーん、わたしからしてみれば、悪魔の実の方こそ不思議だと思うのだけど。」
自然の一部になってみたり、動物になってみたり、ただの果実にどうしてそんな力があるのだろう。
「ローはどうして悪魔の実を食べたの?」
それを聞いたのは、ただ会話の流れと純粋な疑問だった。
しかし、ふとローの顔色が変わったのに気がついた。
「…ごめんなさい、聞いてはいけないことだったのね。」
表情の乏しい彼の些細な変化を見分けることくらい、モモにとってはもう簡単なことだ。
「いや…、そうでもない。」
それはあまり楽しい過去じゃない。
憎しみや怒りに染まった、暗い過去。
でも、モモには、話してみたかった。
モモが自分に全てを打ち明けてくれたように…。
「俺の“オペオペの実”は、ある人に無理やり食わされたんだ。」
「え…?」
全て話した。
故郷の白い町のこと。
死んだ両親と妹のこと。
珀鉛病のこと。
ドンキホーテファミリーのこと。
コラソンのこと。
コラソンがローのために死んだこと。
食事の席でする話には重たすぎたかもしれない。
けれど、モモは黙ってローの話を聞いてくれた。
ローが話し終えたとき、モモはポツリと呟いた。
「わたし、お礼が言いたいわ。そのコラさんって人に…。」
向かいに座るローの手を、そっと握った。
「あなたが今、ここで生きていてくれてるのは、コラさんのおかげなのね。だったらわたし、心からありがとうって言いたい。」
彼を助けてくれて、憎しみから救ってくれて、ありがとう…。
もう会うことは出来ない、ローの大好きな人を想った。
そんなモモを見て、ローは己の心が軽くなるのを感じていた。
心の隅で、ずっと悔やんでいたから。
自分のせいでコラソンが死んだ。
自分がいなければ彼は今も生きているはずだ。
ドフラミンゴを憎む日々の中で、心が黒くドロドロになっていった。
でも、モモといると、そんな心が白く戻っていくのだ。
コラソンの意志は、そうではないと教えてくれる。
彼女がいれば、きっとこの先も迷うことはないだろう。
(俺にはコイツが必要だ…。)
改めて思う。
永遠に手放せない、と。