• テキストサイズ

セイレーンの歌【ONE PIECE】

第48章 欠けた力




痛みで呻く女性を、ベポが軽々と抱え上げた。

「えっと、どこに運んだらいいかな。」

「あ…、こっち!」

弾かれたように少女が立ち上がる。

「きみ、名前は?」

「カトレア。…あなた、クマなのに喋るのね。」

今さらながら、カトレアはローたちの異様さに気づいたようだ。

なにせ、変に目立つ。

けれどこの際、助けてくれるなら誰でもいい。

「ベンおじさん…、この人の旦那さんも病気なの。一緒に診てもらえますか!?」

縋るように頼む。

「……ああ。」

正直なところ、ローは己のオペを安売りするつもりはないし、顔も知らない村人を助ける義理もない。

けれど、ローにはわかっていた。

見えないところで、愛する彼女が泥まみれになって奔走したであろうこと。

医者でもない彼女が、この病をエキノコックス症と断定するまで、どれほど苦労したか考えずともわかる。

その努力を、無駄にはしない。

「シャチ、ペンギン。家の戸をぶち破ってもいい。患者を連れ出して、ひとところに集めろ。」

いちいち回るよりも、その方が早い。

「「アイアイサー!」」

指示を受けた2人は、すぐに駆け出していく。

「オイ、早く案内しろ。」

「……はい!」

彼らがどこの誰でも構わない。
カトレアには、救世主に思えた。


女性の家に到着すると、カトレアの言っていたとおり、中には同じ症状に苦しむ旦那がいた。

「2人とも、発症したての初期段階だな。」

腹の膨らみも目立たず、意識もある。

「ベポ、そのガキを外へ連れて行け。」

「アイアイ!」

ローのオペは能力ゆえに、この程度ならば無痛で血も流れない。

しかし、普通のオペとは大幅に異なる。

かつて、パンクハザードで子供たちの治療をチョッパーに見られた時のように、視覚的にかなりショッキングだ。

そんな光景を、幼い少女に見せるべきではない。

「オレは残っていいか?」

「……ああ。」

助手が必要なほどでもないが、いい勉強になるだろう。

ローはコハクを傍に置いたまま、オペを施した。



/ 1817ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp