第48章 欠けた力
島に海軍がいることを予想して、船はローたちを降ろしたあと、見張り役のジャンバールを残し、潜水して停泊することになった。
「…コハク、お前も残れ。」
船が島に近づく中、ローは自分と同じくらいモモを心配している少年に告げた。
「は? なに言ってんだよ。絶対行く。」
船長であり、父親となったはずのローの命令を、コハクはあっさりと跳ねのけた。
自然と眉間にシワが寄り、どう説得しようか悩む。
言わずと知れたことだが、上陸には危険が伴う。
もし、島にサカズキがいるのなら、前回の二の舞になってもおかしくはないのだ。
船の中が100%安全とは言い切れないが、それでも生存率は格段に上がるだろう。
船長であるからには、船に乗るクルー全員を守る義務がある。
しかし、モモとコハクに対して抱く想いは、それと比べられるものではない。
そんな心中を察してか、コハクがふぅ…とため息を吐いた。
「…わかってるよ、危ないってことくらい。」
コハクとて、上陸することがどれほど危険かわかっている。
それと、ローが自分を案じる想いも理解しているつもりだ。
「でも、ローは言ったじゃん。一緒に母さんを取り戻そうって。」
そして、胸に溜まった気持ちをぶつけてやろうって。
「……確かに言ったが。」
約束したことを覚えている。
「じゃあ、約束は守らなきゃ…だろ?」
「……。」
痛いところを突かれる。
コハクは、ローが約束を守る男だと知った上で発言しているのだ。
けれど、危険であることには変わりない。
険しい表情で黙り込むローに、コハクは肩をすくめた。
これは、自分のワガママだってことをよくわかっている。
日々鍛えているとはいえ、子供の自分は戦闘においてお荷物でしかない。
「じゃあ、こうしよう。島に入って、ローが無理だと感じたら、船に引き返す。」
「……。」
「大丈夫だよ、ヒスイだっているんだ。それにローの能力なら、オレを一瞬で船に帰せるんだろ?」
簡単に言ってくれる。
島全体を覆うようなサークルを作れば、確実に命が縮むのだが…。
けれど、最終的にそうすればいいかと思い直し、ローは渋々頷いた。