第47章 病魔の住処
胃がぐるぐるして、熱いものがこみ上げてくる。
いつの間にか額には脂汗が浮かび、歯がカタカタと震えていた。
それでも、モモの手が止まらなかったのは、キッドとホーキンスがいてくれたから。
2人がいなかったら、とっくに逃げ出していたかもしれない。
ナイフで切り開いた腹部に、手を入れた。
そこに温かみは一切なく、ただただ冷たかった。
無意識に息が止まり、目的のものを探し出す。
「……あ。」
探していたものは、すぐに見つかった。
「あぁ…。」
モモは思わず瞳を閉じた。
その瞬間、ぽろりと涙が零れる。
この島に来て、一度も泣かなかった。
自分よりも悲しい人がいる。
辛い人がいる。
だから、モモが泣くわけにはいかない。
……でも。
もう、ダメだ。
こんなもの、見つけたくなかった。
見つけたら全部、ダメになるから。
流したのは、諦めの涙。
「おい、なんかわかったのか! なぜ泣く!」
キッドたちには、なにを確かめに来たのかを伝えていない。
だから、この状況がわからなくて当然。
「…聞いてんのか!?」
なにも答えず泣き続けるモモに焦れ、ぐいっと肩を掴んで引いた。
ずるりと腹部からモモの手が抜けた。
開きっぱなしの腹部に、キッドの視線が移る。
「……なんだ、こりゃァ。」
腹部の中に、白っぽくて大きなものがある。
これが、人間の臓器か…?
「肝臓? いや、だが、明らかに…。」
ホーキンスも訝しげに覗き込んだ。
「おい、モモ! これはなんだ!」
掴んだ肩に力を入れ、無理やり視線を合わせた。
モモが瞬きをすると、それと一緒に涙が落ちる。
「……寄生虫よ。」
掠れるように答えた。
すると2人とも目を剥く。
「寄生虫!?」
そう、寄生虫。
腹が張るのは、腹水でも盲腸でもなく、これが原因。
どうして気がつかなかったのか。
答えがわかってみたら、ヒントはいくつもあったのに。