第47章 病魔の住処
ベンの家を出たモモは、焦る気持ちを抑えきれず、足早に歩いた。
キッドが呼び止めていたことに気がついたのは、彼が呼びかけに応えないモモに痺れを切らして腕を掴んだ時だった。
「──おい、聞いてんのか!」
「……あ、なに?」
乱暴に腕を引かれて、キッドが共に家を出たのだと初めて知った。
彼がベンの家に留まるはずがないと少し考えればわかることだが、それほどまでに余裕がなかったのだ。
「なに、じゃねぇよ! 状況を説明しろ。」
短い付き合いながら、キッドはモモの変化に目ざとく気づいていた。
顔色が変わったことも、無理やりな笑顔も。
「なにか、わかったんだな?」
モモは一瞬悩んだあと、目を伏せて首を横に振った。
「…いいえ、まだなにもわかってないわ。」
そう。
まだなにも、確かめていない。
「嘘を吐け。わかってないような顔じゃねぇだろ。」
「嘘じゃない。まだ予想の段階なのよ。」
確かめないと、口にできない。
もし違うのならば、これは杞憂に終わるのだから。
「面倒くせぇな、だったら早く確かめろ。」
「わかってる。わかってるわ…。」
ああ、でも。
先にキラーの様子を見たい。
今朝はカトレアが突然早朝に訪ねてきたから、彼の様子を詳しく見れていないんだ。
途端に不安が押し寄せてきて、モモはキッドの手を振り解き、急いで拠点へと向かった。
駆け込むように家の玄関を開けると、モモの勢いに驚いたホーキンスがこちらを見ていた。
「どうした。」
「キラーの…、様子が見たくて…ッ」
途中から駆け足になったものだから、息が上がっている。
だけどそれどころじゃなくて、急いでキラーのベッドに近づいた。
苦しそうに胸が上下している。
それでも、呼吸が止まっていないことに安心した。
すぐに彼の衣服を捲り上げ、腹部を晒す。
「……ッ」
唇を噛む。
キラーの腹部は、触らなくてもわかるくらい、腫れて…いや、膨れていた。
確かめないと。
でも、どうやって?
(そんなの、決まっているじゃない。)
方法は、ひとつしかなかった。