第47章 病魔の住処
「俺たちと共に来るか?」
なにも答えられずにいると、ホーキンスがややあって提案してきた。
見上げると、相変わらずの無表情。
「この村に留まるつもりはないのだろう?」
「留まるつもりは、ないです。」
あくまでもモモは、海賊だから。
「ならば共に来るといい。…航海をしていれば、ヤツと再会することもできよう。」
「それは……。」
彼らの船に乗り、共に旅をして、いつかローと再会する。
たぶん、1番安全な未来。
けれど、他の海賊船に乗るということは、一時的に彼らの仲間になるということ。
同盟も組んでいない海賊は言わば敵同士。
もしかしたら、ローとの再会は互いの戦闘を意味するかもしれない。
戦闘の最中、自分が敵船にいるとローが知ったら、どう思うだろう。
モモの立場は、人質になるのか。
それとも、敵の仲間になるのか。
そんなの、裏切りじゃないか。
「お断りします。」
頭で理解する前に、口から言葉が滑り出ていた。
「あ…、あの、すみません。ありがたい申し出だとは思ってます。」
バカだ、わたし。
ホーキンスさんがせっかく親切で言ってくれたのに。
自己嫌悪に陥って俯きかけたが、ホーキンスが「気にするな」というように頭をぽすぽす叩くので、どうにか顔を上げた。
「では、どうする。」
「…わかりません。」
正直な気持ちだった。
どうすればいいかわからないし、考える余裕もない。
もしかしたら、また間違った道を選んだのかもしれない。
だけどもう、己の自己満足でローを傷つけることだけはしたくなかった。
「でも今は、自分のやるべきことをします。」
考えるのはあとででいい。
目の前に立ちはだかる壁を越えなくちゃ。
「そうか…。ならば、寝るといい。明日も早いのだろう?」
「はい。」
今度こそ家の中に入ろうとしたところで、またもや思い出したように呼び止めた。
「モモ。」
「はい?」
「夢は、悪いものばかりではない。案外、なにかを伝えようとしているのかもしれんぞ。」
伝えるって、あの夢が?
「予知夢というのは、そういうものだ。」
「……はぁ。」
予知夢なったら、困るんですけど。
(ていうか、悪い夢を見たこと、言ってないんだけどな。)
いっそのこと、彼の魔術でどうにかなったらいいのに。