第47章 病魔の住処
「……モモ?」
突然名前を呼ばれて、モモは「ひゃッ」と情けない声を出してしまった。
声を掛けられた方向に目をやると、闇夜の中から現れた人物の顔を、月明かりが照らす。
「あ、ホーキンスさん…。」
すっごくビックリした。
そういえば彼は、家の中にいなかった。
「お出かけでしたか?」
頷くホーキンスは、なんのために出かけていたのかを語らなかったが、たぶん、いつものごとく占いに関係した外出だ。
「眠れないのか?」
「はい。ちょっと、目が冴えちゃって…。」
悪い夢を見たことは言わない。
余計な心配をかけたくなかったし、夢の内容を尋ねられるのも嫌だった。
曖昧に笑って誤魔化せば、ホーキンスもそれ以上追求してくることはなかった。
しばらくの間、沈黙が落ちる。
(家の中に戻ろうかな。)
モモが外にいては、ホーキンスも中に入れないだろう。
本当はもう少し風に当たっていたかったけど、きっともう、同じ夢は見ない。
中に入ろうと声を掛けようとした時、先にホーキンスが口を開いた。
「モモ、お前は…今後どうするんだ。」
今後?
問われている意味がわからず、きょとんとした。
「えっと…、もう一度寝ようかと思ってます。」
とりあえず、率直に答えてみた。
だって、夜明けにはまだまだ時間が掛かるし。
「…そうじゃない。キラーの病が治ったら、ということだ。」
あ、そういう意味か。
見当違いな回答をした自分が恥ずかしい。
でも、もう少しホーキンスも言葉を足した方がいいと思う。
「病が治ったら…か。」
そんなこと、考えてもみなかった。
普通に考えたら重要なことだとは思うけど、調査に翻弄されすぎて、先のことを考える余裕がなかったのだ。
(ローのところに戻りたい。だけど、どうやって探せばいいんだろう。)
この広い海の上で、彼と再会できたのは奇跡に近かった。
その奇跡を再び起こすことはできるのか。
それに、モモには船もなければ航海術もない。
問題は山積みすぎる。
それでも、絶対帰らなければ。
そして、ちゃんと謝るんだ。