第47章 病魔の住処
山での調査をひとまず終え、モモは拠点へと帰ってきた。
「ただいま。キラーの様子はどう?」
留守番をしていたキッドに尋ねる。
「どうもこうも…、変わらねぇよ。」
そう言って、彼はウイスキーの入った酒瓶を煽った。
変わらない…というのは嘘だ。
キラー容態は、確実に悪化している。
当初、何度か目を覚ますこともあったが、最近はほとんど眠ったままだ。
黄疸もひどくなり、お腹はパンパンに張っている。
誰よりも心配しているのはキッドのはずだが、モモを責めたりしないのは、彼なりの優しさだということを知っている。
なんとしても、キラーを助けなくては…。
「それで? お前の方はどうだったんだ。」
「うん…。森には毒草も自生していたけど、どれも症状に見合うものじゃなかったわ。」
それに、村人が間違って口にしてしまいそうなものでもなかった。
「ねぇ、本当にキラーと別行動したことはなかったの? キラーだけ発病しているってことは、なにか彼だけ特別なことをしていると思うんだけど。」
2人とは別のものを食べたり、違う場所に行ったり、そういうことはなかったのだろうか。
「キラーと離れたのは、村で買い出しをした時だけのはずだ。」
キラーには、キッドのお目付役という役目があって、普段から喧嘩早くて問題ばかり起こすキッドの傍を離れない。
「じゃあ、その時になにか口にしたのかしら…。」
買い出しの合間に、ついついお店で買い食いしてしまうのは、モモも体験したことがある。
「それは考えにくいな。アイツはあんなマスクをしてるから、買い食いとかしねぇんだよ。」
滅多にマスクを外さないキラー。
その彼が買い食いをすることは確かにありえない。
でも、この3人の中で、キラーだけが発病した。
そこに必ずヒントがあるはずなのに。
「…いや、キラーは買い出し以外にも、ひとりで行動していたな。」
ホーキンスが思い出したように言った。
「あ? そんなことがあったか?」
まったく思い当たらないという顔のキッドに、ホーキンスは頷く。
「朝方、顔を洗いに行くと言って、川辺に出かけていた。」
顔を見られることを嫌うキラーは、いつもひとりで。
「川辺…。」
だとしたら、原因は川にあるのだろうか。