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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第47章 病魔の住処




ベポを伴い部屋から出ていくローを、引き止めることができなかった。

理由は、コハク自身も困惑していたからだ。

部屋のドアが閉められたあと、ゆるりと本棚に目を向けた。

ローが戻していった植物図鑑を手に取る。

古い古い植物図鑑。
コハクが生まれる前からあって、物心つく頃には、絵本代わりに眺めていた。

娯楽も交流もない孤島で、読み飽きるほどの時間眺めた。

だから、当然、すべてのページを見尽くした。


ペラリ…。

何度も何度も読んだから、目的のページを開くのに、さほど時間は掛からなかった。

「……。」

ヒュドラ草。
赤紫色をした、いかにも毒々しい植物。

口にすればもちろん、茎や葉に生えた棘に触れても危険なものだ。

ローの思い出の人は、このどこからどう見ても毒草であるヒュドラ草を、薬草だと勘違いしたのだとか。

一見すれば笑い話。

でも、今の自分には、とても笑うことなどできない。

なぜなら…。


「なんで……。」

ヒュドラ草が記載されたページには、大きく丸がついていた。

まるで誰かが、「この薬草は効くぞ!」って言っているみたいに。


待てよ、待って…。

これは、どういうことだろうか。

さっき、ローは自分が子供の頃の話だって。

でもこの図鑑は、ローと出会う前どころか、コハクが生まれる前からあるものだ。

もっと言えば、モモはこの本を…。

…だから、待てってば!

誰に急かされているわけでもないのに、心の中で怒鳴る。

偶然?
それにしては出来すぎてる。

じゃあ、巡り巡ってモモの手に渡った?

けれど、大切な思い出の品を、ローが容易く手放すだろうか。


『この本はね、とってもとっても大切なものなの。』


なぜモモは、この本をそれほど大切にしていたのか。

大切な人から貰ったものだから?

本当にそれだけ?

例えば…、大切な人の大切な本だったからじゃないだろうか。

「でも…、だとしたら……。」

すべては、想像だ。

証拠なんかひとつもないし、本当に偶然かもしれない。

けれど、コハクはその大きな丸から視線を外せず、ずっと立ち尽くしていた。

こんなバカみたいな疑惑をぶつけたくとも、答えてくれる人はここにいない。



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