第47章 病魔の住処
(まったく…。)
普段のローは、冷静沈着でめったに感情的になることがない。
自由奔放なルフィとの付き合いや、猪突猛進なクルーたちを統率できるのは、ローだからこそであろう。
ところが、そんな彼もモモのことになると、たちまち形無しになってしまう。
『あんな船長、見たことねぇ。』
長年の付き合いであるシャチたちですら、口を揃えてそう言った。
モモという存在は、彼をここまで狂わせる。
もちろん、コハクにとってもモモは誰より大切な人だが、それは血の繋がりがあってのこと。
誰かが恋しいあまり、周りが驚くほど感情が隠せない。
それは、コハクにとっては未知なるもの。
いつか、わかる時が来るだろうか。
自分も、誰かをここまで愛せるだろうか。
さて、とは言っても、どうしようか。
実は仲間たちから、ローの機嫌が悪いし元気がない。
どうにかしてくれ、と頼まれている。
付き合いはみんなの方が長いのだから、オレに頼まなくても…と言ってはみたが、なにぶんローは、自分の内側に入られるのをひどく嫌うため、ローの機嫌を治すことなど彼らにはできないのだと言う。
するとメルディアが、「モモはローの機嫌を直すのが、とても上手かったわね」なんて言うから驚いた。
自分たちがハートの海賊団に入ったことを打ち明けたのは、つい先日だ。
だというのに、どうしてメルディアはそんなことを知っていたのだろう。
なにはともあれ、モモにできるならきっとコハクにも…。
という根拠のない信頼を寄せられ、こうしてローのもとへ来たわけだが。
結局コハクは、正直にみんなが困ってると告げてしまったけれど、予想外だったのはローの態度。
てっきり邪見にされると思っていたが、まさか気を紛らわせろと要求してくるとは。
親子の誓いを交わしてから、なにかが変わったと感じていたが、こんなにも自分が彼の“内側”にいるとは思わなかった。
嬉しい反面、照れくさい。
(だけど、気を紛らわせるって、なにしたらいいんだ…?)
残念ながら、自分はちっともモモに似ていないため、容姿でローを慰められる可能性は皆無である。