第47章 病魔の住処
キッドの発言により、急に物騒な話になってしまったが、あくまで可能性があるだけのこと。
そうと決まったわけじゃない。
「予想していてもキリがないわ。とにかく、調べてみましょう。」
人為的なものかもしれないということも含めて、調査するしか道はないのだ。
「カトレアは、村の人たちの食べ物を調べてもらえる?」
普段の食事、ここ最近 変わったものを口にしなかったか。
村中に聞いて回れるのはカトレアだけだ。
「うん、任せて。おねえちゃんたちは?」
「わたしたちは、山の中を調べてみる。」
キッドが言うように、山の中に海賊の残党がいないとも言い切れないし。
「…気をつけてね?」
「大丈夫よ、わたしだって海賊なんだから。」
戦力はないけど、歌がある。
それに、キッドかホーキンスがついてきてくれるだろうから。
「わたしたちで、早く原因を見つけようね。」
「うん!」
カトレアを励ますように言ったその言葉は、本当は自分に言い聞かせるためのものだった。
村の調査をカトレアに託したモモたちは、彼女の家を後にした。
キラーの様子も気になるので、一度拠点へ戻ろうと決めた道すがら、キッドが尋ねてきた。
「本当のところ、お前はどう思っている。」
出会った頃より、僅かに歩調を緩めてくれるようになった彼に視線を向ける。
「正直な話、どちらもピンとこないわ。」
世界に存在する毒は、薬よりも種類が多い。
だからきっと、モモが知らない毒もある。
でもモモは、キラーや村人たちが毒に苦しんでいるようには思えないのだ。
理由は特にない。
ただの直感。
「だけど、調査することがムダだとは思わない。今日だって、新しいことがたくさんわかったもの。」
ならば明日には、もっと増えるかもしれない。
「…悠長にしてる時間はねぇぞ。」
「わかってるわ。」
こうしている間に、ひとり、またひとりと命の灯火が消えようとしている。
それをひとつでも多く守らなければ。
「大丈夫、わたしは世界一の名医が率いる船のクルーなのよ。」
そのことだけが、モモに勇気をくれた。