第47章 病魔の住処
「ただいま! 遅くなってゴメ……、どうしたの、2人とも。」
バタンと大きな音を立てて帰ってきたカトレアは、2人の様子に不思議そうな顔をした。
モモは妙に顔を赤くしてどぎまぎしているし、キッドはどこか遠くを見つめてぼんやりしている。
「な、なんでもないわ。…えっと、それでどうだった?」
軽く掻いた冷や汗を袖口で拭い、気を取り直すようにカトレアへ笑顔を向けた。
「うん。看護士さんに聞いてみたけど、ここ最近、輸血をした患者さんはいないってさ。」
ということは、輸血が原因という線はなくなった。
「じゃあ、やっぱり食中毒の可能性が高いかな…。」
だけどいまいち自信がない。
下痢や嘔吐の症状は現れていないし、喀血の説明がつかない。
なにより、食中毒が原因ならば、歌で治癒できるはずだからだ。
「食中毒かぁ。でもみんな、お肉はよく焼くし、食べるものもだいたい同じだけどな。」
「そう…よね。」
でも、なにかあるはずなのだ。
伝染病以外の原因が。
他にどんな可能性があるか考えていると、黙っていたキッドが口を開く。
「…なにも食いものとは限らねぇよ。」
「え…?」
食べ物じゃないって、他になにが…?
「お前みたいな真っ当な人間にゃ、思いつかないだろうがな。あるだろうが、口にすりゃァ具合を悪くするもんが。」
腐ったものでも、調理不足でもなく、口にすれば身体に害があるもの。
それは…。
「……まさか。」
ひとつ、可能性が浮かんだ。
考えつかなかったのは、モモが平和な状況で生きてきたから。
だけどキッドは、食中毒なんかよりも、そちらを先に疑った。
「そうだ。毒って可能性もある。」
驚いたカトレアが「まさか!」と声を上げる。
「毒なんて…! この村には毒を撒く人なんかいないよ!」
「そんなことは俺にはわからん。だが、この島にいたのは、なにも村の人間だけじゃなかっただろうが。」
今ここにいる3人だって、カトレア以外が部外者である。
「この島にゃ、少し前まで俺ら以外の海賊どもがいた。可能性としては、十分だ。」
例えば逃げそこねた海賊がどこかに潜伏しているとか、キッドたちが来る以前に毒を撒いたとか、いくらでも考えられるじゃないか。