第47章 病魔の住処
聞きにくい事案が解決し、ほっと安堵していると、キッドが喉の奥でくつりと笑った。
「……?」
訝しんで目線を合わすと、今度はあからさまに口元を歪める。
「…なぁに? 言いたいことがあるんなら、ちゃんと言ってよ。」
じゃないと、なんだか気味が悪い。
「いや、なに。トラファルガーの野郎に、少し同情しただけだ。」
「……は?」
今の流れで、どうしたらローの話題になるのだろうか。
意味がわからず眉をひそめる。
「まさかアイツの女が、セックスの話ひとつ まともにできないとはな。」
「な…ッ!」
この男、人がマジメに考えているのに、いったいなんの話をしているのか。
「わたしとあなたがいつ、そんな話をしたのよ…!」
確かにちょっと聞きにくいことだったけど、あくまで病気の原因を特定させるためのものだ。
しかし、ムキになればなるほど、モモの頬は紅潮していく。
そんなモモの様子は、新たな誤解を生み始める。
「…なんだ、半分は冗談のつもりだったが、まさか手も出されていねぇのか? アイツがそんなチキン野郎だったとは、拍子抜けだな。」
ちょ、ちょっと待って…!
このままでは、モモのせいでローの人物像が変わっていきそうな気がする。
「そんなわけないでしょう! いい加減なことを言わないで。わたし、子供だっているんだからね!」
「はァ!? ガキがいるだと?」
これにはキッドも驚愕した。
モモの歳を考えると、そんなにおかしいことでもないはずだけど。
「ガキって、トラファルガーとの子かよ。」
「もちろんよ。」
そう答えてから、心臓が大きく跳ねた。
(わたしってば、喋りすぎ!)
いくら悔しかったからとはいえ、こんなにもペラペラと…。
ああ、でもローとコハクは親子の誓いを交わしたのだし、問題はないか。
モモの最大の秘密は、今や嘘で固めるものではなくなっている。
「マジか、トラファルガーにガキ……。」
一方キッドはというと、未だその事実を信じられないようで、ぶつくさと呟いていた。